図6-4「良肢位指導」「ADLで患肢を術前と同程度に使っていくよう指導」「身体活動性の拡大の指導」「肩関節を中心とした関節可動域訓練(個別に訓練および今後の自主トレーニングの指導を行う)」「上肢筋力増強訓練」などを行う。どの手指の運動を行う,肩屈曲・外転が90°以内であるようなADL(皿やお椀を支えるなど)での使用は積極的に勧める,といった指導が現時点ではコンセンサスが得られている(⇒p285)。術後5日目以降は,「創離開がある」「ドレナージ量が多く経過する」などがなければ積極的な関節可動域訓練が開始され,ADLにおいても患肢の使用を制限せず,むしろ積極的に使用するよう促していく。肩関節可動域拡大につながるADLは,まずは洗面や食事動作(箸・スプーンを口元にもっていく,椀を持つ),次に更衣・髪をとかす・洗体などであり,リハビリテーション治療場面での関節可動域訓練をあわせて拡大していく。上肢機能維持・改善・リンパ浮腫の予防という意味でも,上肢動作は積極的に行うよう励行していく。ただし,「重いものを下げ持つ」「疲労物質が蓄積するような(翌日に上肢の疲労が残るような)強い負荷の動作・運動」はリンパ浮腫のリスクを上げるため避けるよう指導する。生活指導は繰り返し行われることが必要である。「退院後も患者の状況にあわせて外来で指導する」「いつでも繰り返し参照できるように外来にも指導書を置いておく」「術後教室のような再指導体制を作る」などが望ましい。2.関節可動域訓練術後5日以降,創部に問題がないかを主治医に確認したら,可能な限り関節可動域を拡大するように訓練を行う。他動で創部のひきつれ感や疼痛を確認しながら関節可動域訓練を開始し,自動介助から自動へと変えていきながら実施する。肩は運動方向が多い関節であり,それぞれの運動にあわせた一式の可動域訓練が望ましい。患者の可動域や疼痛の程度にあわせ,最適な可動域訓練を選択して実施および指導する。リハビリテーション室では,プーリーやサンディングボードなどを用いた関節可動域訓練も可能であるが,退院までの時間が短いことが多いため,自主トレーニングとして継続できる内容の指導もしっかり行う(図6-4)(⇒p286)。壁登り(屈曲)棒体操(屈曲)壁登り(外転)棒体操(外転)術後5〜8日目以降のリハビリテーション治療の例(自主トレーニングを想定して)106第6章 乳がん・婦人科がん
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