第4章関節可動域測定69 関節可動域測定にあたっては次の原則に従う。① 関節可動域は,自動運動でも他動運動でも測定できるが,原則として他動運動による測定値を表記する。自動運動による測定値を用いる場合は,その旨明記する。② 角度計は十分な長さの柄が付いているものを使用し,通常は5°刻みで測定する。③ 基本軸,移動軸は,四肢や体幹において外見上わかりやすい部位を選んで設定されており,運動学上のものとは必ずしも一致しない。また,手指および足趾では角度計の当てやすさを考慮して,原則として背側に角度計を当てる。④ 基本軸と移動軸の交点を角度計の中心に合わせる。また,関節の運動に応じて,角度計の中心を移動させてもよい。必要に応じて移動軸を平行移動させてもよい。⑤ 多関節筋が関与する場合,原則としてその影響を除いた肢位で測定する。たとえば,股関節の屈曲を測定する場合は,膝関節を屈曲しハムストリングをゆるめた肢位で計測する。⑥ 肢位は「測定肢位および注意点」の記載に従うが,記載のないものは肢位を限定しない。変形,拘縮などで所定の肢位がとれない場合は,測定肢位がわかるように明記すれば異なる肢位を用いてもよい。⑦ 筋や腱の短縮を評価する目的で多関節筋を緊張させた肢位で関節可動域を測定する場合は,測定肢位がわかるように明記する。① 関節可動域の測定値は,基本肢位を0°とし,5°刻みで表示する。たとえば,股関節の可動域が屈曲位20°~70°であるならば,この表現は以下の2通りとなる。 ・股関節の関節可動域は屈曲20°~70°(または屈曲20°~70°) ・股関節の関節可動域は,屈曲は70°,伸展は-20°② 関節可動域の測定に際し,症例によって異なる測定法を用いる場合や,その他関節可動域に影響を与える特記事項がある場合は,測定値とともにその旨併記する。 ・ 自動運動を用いて測定する場合は,その測定値を( )で囲んで表示するか,「自動」または「active」などと明記する。 ・異なる肢位を用いて測定する場合は,「背臥位」「坐位」などと具体的に肢位を明記する。 ・ 多関節筋を緊張させた肢位を用いて測定する場合は,その測定値を< >で囲んで表示するか,「膝伸展位」などと具体的に明記する。 ・疼痛などが測定値に影響を与える場合は,「痛み」「pain」などと明記する。Ⓐ 測定方法Ⓑ 測定値の表示Ⅴ.関節可動域の種類 関節可動域の種類は,測定時の関節の動かし方によって,自動と他動に分けられる。 自動(active)は,患者が自分の力で関節を動かしたときに測定する。他動(passive)は,患者の関節を検者などが動かして測定する。Ⅵ.測定方法と測定値の表示Ⅶ.わが国における関節可動域表示・測定法 日本整形外科学会,日本リハビリテーション医学会,日本手の外科学会の三者で「関節可動域表示法ならびに測定法」の統一した基準を昭和49年に発表した。それを実際に運用してみて,細部での問題が指摘されたことから,日本リハビリテーション医学会と日本整形外科学会は,平成7年2月に最初の改訂版「関節可動域表示ならびに測定法」を発表した。その後も多くの部分で合理的でない箇所が指摘されている中,特に足関節・足部・趾に関する用語が国際的な定義と異なっている問題について,日本整形外科学会,日本リハビリテーション医学会,日本足の外科学会の三者で検討し,令和3年10月に「関節可動域表示ならびに測定法(2022年4月改訂)」47)48)を発表した(表4-2)。
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