④ミラーリングを活用する⑤バックトラッキングを活用する⑥話をまとめて言い換える(パラフレーズ)⑦認めることミラーリングとは,相手の言動やしぐさを真似することです。人は自分との共通点をもつ人に親しみを覚えます。患者が辛そうな表情をしていたら,セラピストも辛そうな表情になるように意識し,笑顔を見せれば笑顔で返すようにすることで,患者との共感や信頼関係を深めることができます。 バックトラッキングは「おうむ返し」とも呼ばれ,相手の言葉をそのまま繰り返すことです。例えば,患者が「頭が痛い」と話したら,セラピストも「頭が痛いのですね」と言い直します。パラフレーズとは,相手の言ったことを要約したり,言い換えたりすることです。相手の話の内容を聞いて要点をまとめて言い換える作業は,傾聴するうえで大切な作業です。言い換えることで,相手と自分の認識のズレを調整することもできます。例えば,患者が「○○さんの練習メニューは,本当に大変なんです」と話したら,担当者は「そうなのですね,筋力をつけるために一生懸命練習をしているんですね」とプラスの言葉に言い換えることもできます。このようにパラフレーズを使用することで,聴き手が自分を理解してくれていると認識することができます。承認ともいい,相手を認めて褒めることです。例えば,「毎日,自主練習を欠かさずやっていてすごいです」のように,患者が頑張っていること,継続して行っていることに対して褒めてあげてください。たとえ結果が出なくても,行動自体を認めることによって,患者の意欲向上につながります。コミュニケーションにおいて「間」とは,話し手と聞き手の間に生じる言葉以外の空間や時間のことです。いわゆる沈黙です。話し手が話し終えた後に聞き手が反応するまでの時間や,話者と聞き手の間にある沈黙などです。コミュニケーションをとる際に「間」がなければ,話し手の意図を理解することは難しいです。「間」は,単に言葉の区切りや息継ぎのために必要不可欠な時間というだけではなく,感情表現のひとつの手段として重要な役割を担っています 7, 8)。「間」,いわゆる沈黙に焦って自分から話をし過ぎると,相手の話を聴くことができなくなります。相手と自分では話しやすい話し方やペースが違うので,沈黙の時間が生まれても問題ありません。沈黙は相手が自分の考えを頭の中でまとめている最中ですので,妨げないようにしましょう。154D 実践的なコミュニケーション術5)沈黙に慣れる
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