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答 問1101:3,問1102:2,5
1. 基礎生理学
a.循 環
問 1101★
既出【Ⅲ─2─B】(ID0000368)
次のうち誤っているのはどれか。
1.心筋には被検者に対する自動性があり横紋
筋でできている。
2.心筋は「全か,無か」の法則に従う。
3.調子取り(ペースメーカー)は房室結節にあ
る。
4.心室への血液流入量が多いと拡張時に心室
が伸展され,それに応じて心室の収縮は強
くなる。
5.心拍出量=1回拍出量×(60÷RR間隔)
(RR
は秒単位)
作問のねらい 循環系の代表である心臓の構造・
機能に関する設問である。生理検査の基礎であり,
心臓の収縮・拡張のメカニズムや役割について熟知
する必要がある。
〔注解〕 1.心筋は横紋を有する不随意筋である。
心筋は,興奮性,収縮性,伝導性,自動性を有し,
心電図では収縮性はわからない。
2.心筋は「全か,無か」の法則に従う。
3.心臓の自動能の調子取り(ペースメーカー)は,
自動性頻度が70〜80/分で最も高く安定している
ため,洞(房)結節により行われる。もし洞(房)結
節が機能を失った場合は,房室結節,ヒス束,プル
キンエ線維などの刺激生成能が発揮される。心室筋
で異常な膜電流により自動的に興奮することがあ
り,トリガー活動と呼ばれる。
4.スターリングの法則である。どれだけの血液
を送り出せるのかは,心臓がどの程度伸縮するかに
よる。つまり最終拡張(弛緩)時の心筋長に正比例
して,次に起こる心筋収縮能力が変化することであ
る。
5.心拍出量とは,心室(左室,右室)から拍出さ
れる血液量である。1分間に拍出する血液量として
表す。正常で約5l/minである。
1回拍出量は,心室が1回で拍出する血液量であ
り,安静時仰臥位で約70mlである。(60÷RR間隔)
は心拍数(毎分)を表す。
〔関連事項〕「全か,無か」の法則(all─or─nonelaw)
とは,一般に刺激が弱いときには,その器官が何の
反応も示さず,刺激があるレベル(閾値)以上では一
定の大きさの反応が起こり,それ以上刺激を強くし
ても,その反応の大きさが変らないという法則で,
Bowditch(1871)がカエルの心臓の収縮でみつけた
ものである。神経線維の膜興奮も,1本ではこの法
則に従う。
問 1102★★
既出【Ⅲ─2─A】(ID0000369)
健常成人について正しいのはどれか。2つ選べ。
1.体内の水分量は体重の約50%である。
2.体の全血液量は体重の約8%を占める。
3.体重の約15%を占める水分が体の細胞内液
として分布する。
4.体重の約5%の水分がリンパ液と脳脊髄液
である。
5.通常,1日の水分排出量はおよそ2,500ml
である。
作問のねらい ヒトの体液に関する設問である。
〔注解〕 1.体全体でいうと水分量は体重の約60%
(55〜60%)である。女性は男性に比べて水分量が
少なく,肥満者は脂肪が多く水分の比率が少ない。
50%は脱水状態か,脂肪の多い肥満者である。体
の組織では皮膚組織で水分が多く,約70%にもな
る。
2.全血液量は体重の約1/13で約8%にあたる。
3.体重の約40%の水分が体の細胞内液,約20%
が細胞外液として分布する。
4.体重の約1%の水分がリンパ液と脳脊髄液で
ある。
5.1日の水分排出量の内訳は,尿が1,000〜
1,500ml,皮膚や呼気からの不感蒸散が約800ml,
汗が約600ml,大便に出るのが約100mlである。
〔関連事項〕人間は,血管内を血液が流れる閉鎖血
臨床生理
6 臨床生理学
6
[国家試験の出題傾向]
卒前習得として必要な基礎的要素中心の出題であった。設問の中に応用力を求める複雑性もなく適切な
出題である。