228 6臨床生理学
答 問1103:3,5,問1104:4,問1105:1
管系を持ち,その血液量は体重の約1/13(約8%)
で,出血による致死量は全血液量の約50%である。
体重60kgの成人男性の血液量は約4,000mlなので,
その出血による致死量は理論的には2,000mlである
が,実際に大量出血すると出血性ショック(低血量
性ショック)や外傷性ショックによってそれ以下の
出血量でも死亡する危険性がある。
問 1103★
既出【Ⅲ─2─B】(ID0000370)
健常人で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.左心室拡張期圧>大動脈拡張期圧
2.肺動脈拡張期圧>大動脈拡張期圧
3.肺動脈拡張期圧>左心室拡張期圧
4.右心室収縮期圧>大動脈拡張期圧
5.右心室収縮期圧>左心室拡張期圧
作問のねらい 血液の循環圧力は部位によって異
なる。右心系と左心系それぞれについての圧の違い
を体循環,肺循環の目的の違いから理解しておきた
い。
〔注解〕 健康成人では大動脈圧は約120/80mmHg,
肺動脈圧は約25/8mmHgである。心室は,拡張期
では0あるいはマイナスに下がる(胸腔内の陰圧に
よる)。左心室と右心室の収縮期での最高内圧値は
それぞれ100〜160mmHg,15〜35mmHgである。
〔関連事項〕血圧の変動は,主に心拍出量(CO)と総
末梢抵抗(TPR)による。心拍出量が増すと血管を
流れる血液量は増大し,血圧は上昇する。また,末
梢の細動脈が収縮することによって血液の通る幅
が狭くなり,血圧が上昇する。
問 1104★★
既出【Ⅲ─2─A】(ID0000371)
静脈血の心臓への還流に関して誤っているの
はどれか。
1.重力は立位で下肢での還流を抑制
2.筋収縮が還流を促進
3.静脈弁の逆流防止作用が促進
4.呼吸運動の吸気時に抑制
5.交感神経刺激により促進
作問のねらい 循環生理学の血行動態に関する設
問である。体循環,肺循環,脳循環についてあわせ
て覚えたい。
〔注解〕 静脈には逆流を防止するための弁(静脈
弁)がついていて,血液が一方向にしか流れないよ
うになっている。
1.重力は立位では心臓より上位の上半身の静脈
血の心臓への還流を促進するが,下半身のそれは抑
制する。
2.筋は収縮することにより静脈管を圧迫し,還
流を促進する(milking action)。
3.特に下半身の静脈に発達している静脈弁は,
血液の逆流を防ぐ。
4.吸気時には胸腔が拡大し,胸腔内を陰圧にす
ることによって吸気が起こるが,その陰圧は同時に
静脈血を胸腔に吸引し,心臓への還流を促進する。
5.交感神経刺激により心拍出量が増加するのに
伴い,静脈還流量も増加する。
〔関連事項〕血液が心臓へ戻ることを静脈還流とい
い,この静脈還流には静脈の内側にある弁が大きな
役割を果たしている。また静脈は伸展性が高く,循
環血液量の70〜80%を容し,容量血管と呼ばれる。
細動脈や毛細血管を通過した後の静脈において静
脈圧はほぼゼロに近い。
問 1105★★
既出【Ⅲ─2─B,4─A】(ID0000372)
健常人でみられるのはどれか。
1.拡張期時相は脈拍が速くなると短くなる。
2.肺動脈弁閉鎖は大動脈弁閉鎖より先に起こ
る。
3.等容弛緩期はⅡ音の直後から始まる。
4.Ⅳ音は左心室へ血液が急速に流れ込むとき
に生じる。
5.左冠状動脈の血流は収縮期に増加する。
作問のねらい 心周期現象に関する設問である。
心電図の各波の発生と心音図における音の発生のタ
イミングについて理解が必要である。
〔注解〕 1.時相とは時間軸上の一時点をもとに,
時間の前後関係を表す言葉。脈拍(心拍)が速くな
ると,拡張期時相は短くなる。
2.大動脈弁閉鎖が肺動脈弁閉鎖より先に起こる。
3.拡張期は等容弛緩期,急速充満期,緩速充満期,
前収縮期に分けられる。等容弛緩期はⅡ音の直前か
ら始まる。
4.Ⅲ音が左心室へ血液が急速に流れ込むときに
生じる低周波性の小さい音である。
5.左冠状動脈の血流は,体循環と異なり心臓の
拍出期(収縮期)に減少し,拡張期に増加する。
〔関連事項〕Ⅳ音は心房収縮により生じるため心房
音とも呼ばれ,通常聞き取れない。心肥大などで聞
かれる(拡張期過剰心音)。