252 6臨床生理学
答 問203:5,問204:2,3
b
感覚神経伝導速度検査(成人)
神 経
測定部位伝導速度(m
/
sec)
正常(異常値)
逆行性での振幅(mV)
正常(異常値)
正中神経手首〜示指
肘〜手首
55〜65(46以下)
55〜69(53以下)
40(9以下)
尺骨神経手首〜小指
肘〜手首
52〜58(45以下)
58〜69(55以下)
37(6以下)
腓腹神経膝〜足首53〜60(50以下)
12(4以下)
問 203★★★
既出【Ⅲ─8─A】(ID0000423)
正しいのはどれか。
1.2次ニューロンは大脳皮質から脊髄運動神
経細胞までの系をいう。
2.筋の随意収縮は2次ニューロンの支配であ
る。
3.神経・筋単位は脊髄後角細胞で支配される。
4.筋電図スパイクは1筋線維単位の活動電位
である。
5.2次ニューロンの異常は筋電図でわかる。
作問のねらい 神経系検査の解剖学的基礎事項
で,脳波検査においても重要である。
〔注解〕 1.2次ニューロンは脊髄運動神経細胞か
ら神経・筋接合部を経て,筋までの伝達系を意味す
る。設問の大脳皮質から脊髄運動神経細胞までは,
中枢神経・筋系を指し1次ニューロンと呼ぶ。
2.筋の随意収縮は,1次ニューロン支配であり,
大脳皮質の運動野からの神経情報が神経伝達路を経
て支配筋に伝わることによる。
3.神経・筋単位は脊髄前角細胞で支配され,脊
髄前角にある1つの運動神経細胞と,それに続く神
経線維,それに支配されるいくつかの筋線維群を総
称して,神経・筋単位(neuromuscular unit, NMU)
と呼ぶ。
4.筋電図で記録される波形は通常複数の筋線維
の活動電位であり,シングルファイバー針電極を使
用することにより,単一筋線維筋電図を記録するこ
とも可能であり,通常の針筋電図より詳細な活動電
位が得られる。
5.2次ニューロンの異常は筋電図検査により障
害の確定診断が可能であり,有用な検査法といえる。
〔関連事項〕1つの脊髄前角細胞が支配する筋線維の
数を神経支配比と呼び,顔面筋では少なく,四肢筋
では多い。
問 204★★
既出【Ⅲ─10─C】(ID0000424)
正しいのはどれか。2つ選べ。
1.H波が誘発される経路は多シナプス性であ
る。
2.H波はM波の潜時より長い。
3.重症筋無力症では連続刺激で漸減現象がみ
られる。
4.脊髄前角炎で末梢神経伝導速度が低下する。
5.強さ─期間曲線は中枢性疾患の場合に異常
カーブを示す。
作問のねらい 神経伝導速度に関係した総合問題
である。
〔注解〕 1.H波は求心性group Ia線維を上行し,
脊髄反射性に出現する波形であり,誘発経路は単シ
ナプス性である。
2.H波は筋紡錘源の求心性線維を伝わった興奮
が脊髄を迂回し,遠心性のα線維を通って筋に到達
するため,潜時はM波より長い(下図参照)。
3.神経・筋接合部の興奮伝達異常である重症筋
無力症は,末梢運動神経に連続刺激を与えた場合,
頻回刺激に応じきれずにM波の振幅は漸減(wan─
ing)する。健常者では変化なし。
4.脊髄前角炎の場合,末梢での神経線維の伝導
速度に直接影響が及ばない。
5.強さ─期間曲線は末梢神経麻痺など末梢神経・
筋系の疾患で異常カーブを呈し,中枢性疾患では異
常カーブを認めない。
H波
M波
S
図 ヒラメ筋脛骨神経刺激誘発波形(M, H波関連図)
M波の潜時:数 msec
H波の潜時:20~30 msec
〔関連事項〕反復刺激誘発筋電図は,手や肩などの筋
の表面に電極を置き,その筋を支配する末梢神経を
電気的に反復刺激して誘発される筋の活動電位を
測定する。重傷筋無力症では,反復神経刺激(特に
低頻度1〜5Hz)で誘発される活動電位が,次第に
減衰するのが特徴である(漸減現象waning)。