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無拍動流ポンプ(定常流ポンプ)

無拍動流ポンプには従来より用いられていた

ローラーポンプ

と最近使用が増加しつつある遠心

ポンプ

がある。それぞれの長所,短所を表1にま

とめた。一長一短であるが,

1990

年代から安全性

と血液損傷の少なさ,長期補助にも移行が容易な

どの理由で遠心ポンプを採用する施設が増加しつ

つある。しかし,遠心ポンプはローラーポンプに

比べ高価であるため,医療費削減時代の今日,コ

スト対効果比の観点から,循環時間が数時間の心

臓手術の血液ポンプとしてはローラーポンプでも

十分ではないかという回帰的考えもある。

a)ローラーポンプ

(図4)

塩化ビニル,シリコーンゴム,ラテックスゴム

などの弾性のあるチューブをローラーがしごくこ

とにより血液を駆出するものである。直線上に位

置した二つのローラーのどちらか一方が必ず

チューブをしごく

2

ローラータイプが最も普及し

ている。血液損傷は後述する遠心ポンプより高度

とされており,しごかれるチューブの内面から微

小粒子(摩耗粉)が発生するとされている。最近

ではこの摩耗粉の出にくい高弾性の強化ポリ塩化

ビニルが用いられることが多い。駆出される血液

量の規定因子は回転数とチューブの内径で,回転

数に正比例することになる。

b)遠心ポンプ

(図5)

遠心力を利用して血液を駆出するポンプで,遠

心力を発生する原理としては,回転する

2

3

の円錐(コーン)面間の粘性摩擦により血液を引

きまわすことで遠心力を発生させるタイプと,羽

根車により強制的に血液を回転させるタイプがあ

る。

同じ回転数であっても後負荷が変動すると流量

が変化してしまうため,流量を一定に保つには流

量計を用いて流量を監視し回転数を制御する必要

があり,流量定値制御や人工心肺離脱時の流量制

御はやや煩雑で熟練を要する。流量計には電磁流

量計

と超音波流量計があり,キャリブレーション

の不要な超音波式が増えつつある。

また最近では,

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第2編

専門科目

図4

ローラーポンプ

不要

回転数,チューブ内径

血液駆出量規定因子

遠心ポンプ

必要

チューブ圧閉度の調整

不可能

ローラーポンプ

可能

ベント・吸引ポンプとしての使用

必要

表1

ローラーポンプと遠心ポンプの比較

太字

は長所であることを示す。

不適

長期補助循環

やや熟練を要す(特に開
始・離脱時に)

大量空気混入時の危険性

発生しない

容易

流量定値制御

回転数,後負荷

発生する

チューブの磨耗粉(微小粒子)

生じない

生じやすい→微小気泡発生

過度の陰圧

あり

なし

ポンプ停止・低回転時の逆流

高価

安価

価格

小型・可搬性大

大型

駆動装置

不要

流量計

ローラーポンプより軽度

遠心ポンプより高度

血液損傷

回路破裂の危険なし

発生→回路破裂の危険大

回路閉塞時→危険な高圧