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 問1101:2,3,問1102:3,問1103:2,5

1. 解剖学総論

a.発生・細胞・組織

問 1101★★

既出【Ⅴ─①─1─A】(ID 0000229)

正しいのはどれか。2つ選べ。
1.口腔粘膜上皮は内胚葉由来である。
2.小腸の粘膜上皮は内胚葉由来である。
3.骨は中胚葉由来である。
4.下垂体は中胚葉由来である。
5.平滑筋は外胚葉由来である。

 作問のねらい 胚葉とそれから発生する臓器の問
題である。発生学の基本的知識を問う問題である
が,常識では答えられない臓器(例えば,下垂体や
眼球,副腎髄質,甲状腺,鼓室など)があるので注
意が必要である。

〔注解〕ヒトは,3層(外胚葉・中胚葉・内胚葉)の

原始胚葉層からすべての組織が発生する。

外胚葉の表層外胚葉からは表皮,毛髪,爪,皮膚

腺,乳腺,4.下垂体前葉,歯エナメル質,内耳,
水晶体,神経外胚葉からは脳神経,知覚神経節と神
経,副腎髄質,色素細胞,中枢神経系,網膜,松果
体,4.下垂体後葉が発生する。

中胚葉からは軟骨,3.骨,結合組織,内臓筋肉

(5.平滑筋),胴体の筋肉(横紋筋),心臓,脈管,

リンパ系,血液,リンパ球,脾臓,腎臓,表皮の真
皮,生殖腺,生殖管,心膜,胸膜,腹膜の漿膜,副
腎皮質が発生する。

内胚葉からは,呼吸器の上皮,2.消化管の上皮,

肝臓・膵臓の実質,膀胱・尿道の上皮,咽頭,甲状
腺,扁桃腺,上皮小体・鼓室・耳管の上皮が発生す
る。

問 1102★★

既出【Ⅴ─①─1─B】(ID 0000230)

細胞内呼吸を行うための小器官はどれか。
1.リソソーム
2.中心小体
3.ミトコンドリア
4.小胞体
5.ゴルジ装置

 作問のねらい 細胞内小器官の機能についての問
題である。確実に理解しておくことが必要である。

〔注解〕細胞は細胞質と核からなり,電子顕微鏡学

的に細胞質には複数の細胞内小器官(cellorganella)
と呼ばれる構造物があり,それぞれに異なった機能
がある。

1.リソソーム(水解小体):球形の小体で,加水

分解酵素を含む。

2.中心小体:微細管からなる中心子をつくる。

核分裂の時に移動し,星状球となる。また,線毛の
形成に関与し,細胞質の運動にかかわる。

3.ミトコンドリア(糸粒状):球状ないし糸状で

内膜の折り返しが棚状の構造を示す。細胞内の呼吸
とエネルギー(ATP)産生に重要な働きをもつ。

4.小胞体:小管〜小胞状の腔からなり,粗面小

胞体と滑面小胞体の二種がある。細胞内物質の輸
送,脂質合成,グリコーゲン代謝などに関与する。

5.ゴルジ装置:扁平な囊の積み重ねで,分泌物

の形成にたずさわる。

問 1103★★

既出【Ⅴ─①─1─B,2─C】(ID 0000232)

常に増殖している細胞はどれか。2つ選べ。
1.気管支腺細胞
2.胸腺皮質リンパ球
3.胃平滑筋細胞
4.腎尿細管上皮細胞
5.精母細胞

病理組織

5 病理組織細胞学

5

[国家試験の出題傾向]

第62回(2016)臨床検査技師国家試験では,解剖・組織学的な問題が5題で,炎症などの病理学総論問

題が5問であった。他方,疾病の病理問題はゼロで,病理学各論に関する問題が減少している。病理標本
作製に関する問題の傾向は,病理分野全体を網羅した,基礎的な問題が出されている。難易度の高い問題
はないが,幅広い知識が要求される。また,病理診断を問う問題はないが,写真問題では,典型的な疾患
や腫瘍の組織像を理解している必要がある。