492 9臨床血液学
答 問109:1,3,問110:1,2,問111:3,4
問 109★★
【Ⅵ─2─B,10─C】(ID 2010164)
末梢白血球数で正しいのはどれか。2つ選べ。
1. 運動後に増加する。
2. 基準範囲は乳児よりも成人の方が高い。
3. 本態性血小板血症では好中球が増加する。
4. 慢性骨髄性白血病では好酸球が減少する。
5. 副腎皮質ステロイド服用でリンパ球が増加
する。
作問のねらい 末梢白血球数についての設問であ
り,生理的変動(運動,ストレス),基準範囲(年齢
階級別特徴),骨髄増殖性疾患での特徴,ステロイ
ド服用による影響について問う。
〔注解〕 1.運動,ストレス,エピネフリン(アド
レナリン)投与などにより,白血球数は辺縁プール
から循環プールに移動するため,末梢白血球数は増
加する。
2.成人の基準範囲は4,000〜8,000/μL,新生児・
乳幼児は高値を示し,新生児では20,000/μLを超
えることもある。
3.本態性血小板血症は,血小板60万/μL以上,
白血球数(好中球)増加,通常貧血はなく,大血小
板を認める。骨髄は過形成で巨核球著増,出血時間
延長,エピネフリン(アドレナリン)凝集低下を認
め,血清カリウム上昇を示す。
4.慢性骨髄性白血病は,軽度貧血,血小板数は
増加例が多く,白血球数著増(しばしば10万/μl以
上),好酸球や好塩基球数は増加,アルカリホスファ
ターゼ活性低下,Ph染色体t(9;22)・BCR/ABL
キメラ遺伝子を認める。血清ビタミンB
12
高値,血
清・尿中尿酸高値。
5.副腎皮質ステロイド服用で好中球が増加し,
リンパ球の絶対数に変化はないが,百分率では減少
する。
〔関連事項〕末梢白血球数は個人差が大きく,個人内
でも短時間で変動する。日内変動を示し,一般に午
後は白血球数が高めとなる。白血球数は細菌感染
症,悪性腫瘍,慢性骨髄増殖性疾患(慢性骨髄性白
血病・真性多血症・骨髄線維症・本態性血小板血
症),喫煙などで増加し,腸チフス,百日咳,ウイ
ルス感染症,無顆粒球症,貧血(再生不良性貧血・巨
赤芽球性貧血・発作性夜間血色素尿症),脾機能亢
進などで減少する。
問 110★★
【Ⅵ─2─A】(ID 2011059)
鉄を含むのはどれか。2つ選べ。
1.フェリチン
2.ミオグロビン
3.ハプトグロビン
4.トランスコバラミン
5.プロトポルフィリン
作問のねらい 体内鉄はヘモグロビン鉄,貯蔵鉄
(フェリチン,ヘモジデリン),組織鉄(ミオグロビ
ン鉄,含鉄酵素),血清鉄の形で分布していること
を記憶している必要がある。
〔注解〕 1.フェリチンは可溶性の鉄蛋白質の一つ
で,蛋白(アポフェリチン)が球状の殻を形成し,
鉄原子は3価の水酸化鉄,リン酸鉄としてここに含
まれている。血清フェリチン濃度は貯蔵鉄量をよく
反映する。
2.ミオグロビンは主に心筋や骨格筋などの筋細
胞に存在し,赤血球のヘモグロビンが運搬してきた
酸素分子を結合して貯蔵するヘム蛋白質である。ヘ
モグロビンのように4量体ではなく,単量体である。
3.ハプトグロビンは主に肝臓で産生される蛋白
で,血液中の遊離ヘモグロビンと迅速に結合するこ
とにより,腎糸球体から尿中への遊離ヘモグロビン
喪失を防ぐ。
4.トランスコバラミンは回腸で吸収されたコバ
ラミン(ビタミンB
12
)と結合し,血中を運搬する輸
送蛋白のことである。
5.一般にヘムの前駆物質であるプロトポルフィ
リンⅨを指し,グリシンとサクシニルCoAが重合
してできたδ─アミノレブリン酸(ALA)から産生さ
れる。
〔関連事項〕成人の体内鉄総量は約3〜4gで,ヘモ
グロビン鉄は約2.5g,貯蔵鉄は約1g,残りが組織
鉄,血清鉄として分布する。血清トランスフェリン
の基準範囲は男性20〜250ng/mL,女性5〜120ng/
mLである。
問 111★★
【Ⅵ─2─A】(ID 2011060)
ヘモグロビンで正しいのはどれか。2つ選べ。
1.メトヘモグロビンは酸素結合能が高い。
2.pHが上昇すると酸素親和性が低下する。
3.ヘモグロビンFはアルカリ抵抗性が強い。
4.ヘムは赤芽球のミトコンドリア内で作られ
る。
5.ヘモグロビンAは
α
2
δ
2
のポリペプチド鎖を
有する。
作問のねらい ヘモグロビンの酸素親和性とボア
効果,赤芽球におけるヘム合成過程,健常成人ヘモ
グロビンの種類・グロビン構成・主な性状を説明で
きるかを問う。
〔注解〕 1.ヘモグロビンのヘム鉄が2価から3価に