118 4臨床検査総論

 問110:5,問111:3,問112:2

スピードに差が生じ,混合物の分離が可能となる。

3.ゲルろ過クロマトグラフィは,分子量の違い

によって蛋白質を分離する方法で,分子ふるいと呼
ばれていた。多数の小さな孔の開いているカラムに
担体を詰めて上部に試料を加えて流すと,分子量の
大小によってカラム内の通過時間が異なる原理を応
用している。

4.蛋白質はpHによって+荷電や−荷電をする。

この性質を利用して担体(陽・陰イオン交換樹脂)
に溶媒を流して蛋白質を分離する方法である。

5.酵素,受容体,抗体などの蛋白質は特定の物

質(リガンド)に強い結合親和性を有する。この結
合親和性で蛋白質を分離する方法である。

〔関連事項〕他にも高速液体クロマトグラフィ,イ

ムノクロマトグラフィ,ガスクロマトグラフィな
どがある。

問 110★★★

【Ⅰ─①─2─A】(ID 2016002)

ISO 15189による臨床検査室の継続的な品質管
理の4つのサイクルに含まれないのはどれか。
1.計画(plan)
2.分析・評価(check)
3.対応策実施(action)
4.検査実施・精度管理(do)
5.施設間比較(comparison)

 作問のねらい  医療の「質と安全」が問われてい
る今日,臨床検査室として第三者機関による国際的
な評価・認証が必要となっている。ISO15189は今
後の検査室運営で重要な事項として理解しておきた
い。

〔注解〕 ISO15189は「臨床検査の品質保証と技術能

力に関する要求事項」で,2004年に認定審査が開始
された。評価項目は多岐に及び,検査室全体で取り
組む必要がある。日常の精度管理のみならず,人事
管理,精度管理,職員教育などを文書化する必要が
ある。

検査室を管理運営するため,1.計画(plan)→4.

検査実施・精度管理(do)→2.分析・評価(check)
→3.対応策実施(action)→計画(plan)に戻る。こ
のPDCAサイクルを活用し、問題点を洗い出して
継続的な業務改善に繋げる努力が必要となる。ま
た,平成28年4月の診療報酬改定でISO15189認証
施設に加算が認められた。

5.施設間比較は外部精度管理により自施設の

データ評価を行うことである。

〔関連事項〕SOP(標準作業手順書),QMS(品質マネ

ジメントシステム),JCI(国際的医療機能評価機
関)。

問 111★★

【Ⅰ─①─4,5】(ID 2016003)

検査部門の管理と運営において正しいのはど
れか。
1.最新機器はメンテナンスが不要である。
2.採血後の針はリキャップして廃棄するのが

望ましい。

3.検査終了後の血液は感染性産業廃棄物とし

て廃棄する。

4.外来採血時には患者名による呼び出しが義

務化されている。

5.検査マニュアルは検査の臨床的意義につい

てまとめたものである。

 作問のねらい  臨床検査室の管理運営に関する複
合問題である。感染性廃棄物,機器のメンテナンス,
針刺し事故や患者誤認防止策などは安全で質の高い
検査データを提供するうえで大切な事項である。

〔注解〕 1.最新の機器であっても稼働後は,日ご

と,月ごと,年ごとのメンテナンスは必ず実施しな
ければならない。

2.針刺し事故による業務感染防止のため,採血

針のリキャップは禁止されている。

3.廃棄物は産業廃棄物と一般廃棄物に大別され

る。特別管理産業廃棄物の感染性産業廃棄物には血
液,注射針などが含まれる。特別管理一般廃棄物の
感染性産業廃棄物には臓器,血液等が付着したガー
ゼなどが含まれる。いずれの感染性廃棄物も指定さ
れたバイオハザードマーク付の専用容器に入れ,許
可取得業者に委託しなければならない。

4.患者の個人情報保護のため外来受付や会計窓

口での呼び出しはせず,番号表示などで対応してい
る。

5.検査マニュアルは,検査の精度を保証するた

め,項目ごとに検体採取~測定~結果報告までを標
準化したマニュアルである。

〔関連事項〕バイオハザードマークと分別,針刺し

事故とウイルス感染,個人情報保護,SOP,産業廃
棄物管理票(マニフェスト)。

問 112★★

【Ⅰ─①─3─A】(ID 2016031)

ポイント・オブ・ケア・テスティング〈POCT〉
の対象とならないものはどれか。
1.血 糖
2.インスリン
3.プロカルシトニン
4.ヒト絨毛性ゴナドトロピン〈hCG〉
5.脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉

 作問のねらい  POCTは患者の傍で行われる検査