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 問101:5,問102:3,5

1. 造血・鉄代謝・血球・血液成分

問 101★★

【Ⅵ─2─A】(ID 2001153)

網赤血球で正しいのはどれか。
1. 成熟赤血球より小さい。
2. 産生後約6時間で成熟赤血球になる。
3. ヘモグロビンの変性物が網状に染まる。
4. 網状物質は成熟するにつれて多くなる。
5. 末梢血中には約5万/μlある。

 作問のねらい  網赤血球について形態,基準範
囲,成熟とその変化について理解しているかを問う
問題。

〔注解〕 網赤血球は,骨髄から末梢血に出現した直

後の若い赤血球のことで,脱核直後で細胞質に残存
している3.RNAが,ニューメチレン青などで超生
体染色されると顆粒状網状に染め出される。

網赤血球は,1.成熟赤血球よりも大きく柔らか

く比重は軽い。

4.成熟するにつれて網状物質(残存RNA)は消

失し,末梢血に出現してから2.約24〜48時間後
に成熟赤血球となる。

健常成人の末梢血中には網赤血球は0.5〜2.0%,

5.実数では約2〜10万/μl存在する。

〔関連事項〕網赤血球の増加する例として,慢性の

溶血性貧血では持続的増加,または貧血治療に反
応して赤血球産生が盛んになったとき,すなわち
鉄欠乏性貧血への鉄剤投与,悪性貧血へのビタミ
ンB

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投与,葉酸欠乏性貧血への葉酸投与時には治

療開始後1週間前後に網赤血球が一過性に増加する

(網赤血球分利)。大量出血後にも網赤血球分利が

みられる。減少する例として,再生不良性貧血,
赤芽球癆などがある。

問 102★★

【Ⅵ─2─A】(ID 2006140)

正常赤血球で正しいのはどれか。2つ選べ。
1. 膜は蛋白質と糖質で構成される。
2. 全重量の約1/2をヘモグロビンが占める。
3. 嫌気的解糖をする。
4. 外力によって変形しにくい。
5. 寿命は約120日である。

 作問のねらい  赤血球の産生と崩壊,形態と機
能,生化学についての設問であり,細胞膜の構成,
成分,物理的・生化学的性状,寿命について記憶し
ている必要がある。

〔注解〕 1.赤血球の膜は,遊離コレステロールと

リン脂質がほぼ等量からなる膜脂質二重層を基本と
しており,これに種々の蛋白質が関与している。

2.赤血球の全重量の約2/3は水分で,残り約1/

3をヘモグロビンが占める。

3.赤血球はミトコンドリアをもたないので,酸

化的リン酸化を行うことはできず,細胞質での嫌気
的解糖でATPを得ている。

4.赤血球細胞膜直下には,スペクトリンという

弾力性に富む線維状蛋白の網目構造が,細胞膜を内
面から支えている。この構造によって赤血球は高い
柔軟性と応形機能をもち,外力によって容易に変形
し,また復元する。

5.正常赤血球の寿命は約120日で,膜蛋白の異

常や,細胞質内糖代謝過程の酵素異常などがあれ
ば,膜が脆弱化して溶血しやすくなり,寿命が短縮
する。

〔関連事項〕赤血球はその形態,機能を維持するため

にエネルギー源となるATPの約90%を嫌気的な解
糖系であるエムブデン─マイヤーホフ経路により,
約10%を五単糖(ペントース)リン酸回路で産生し
ている。エムブデン─マイヤーホフ経路にはピルビ
ン酸キナーゼ,五単糖リン酸回路にはグルコース6─
リン酸脱水素酵素(G6PD)などの多くの酵素が必要
であり,これらの先天的欠損は溶血性貧血の原因と

血液学

9 臨床血液学

9

[国家試験の出題傾向]

第63回国家試験では昨年同様,血液疾患と検査値やその解釈を解答させる問題が多く,その中で検査

所見や解釈が「なぜそのような結果になったのか」のメカニズムについて理解しておかなければ解けない
問題であった。フローサイトメトリーのスキャターグラム解析結果を問う問題が初めて国家試験に出題さ
れた。