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第2編 臨床医学総論ては,試験紙により定性的に潜血反応として検査が行われる。何らかの検尿異常がみられる場合には,尿沈渣検査(尿を遠心し沈殿物を光学顕微鏡により観察する検査)が行われる。強拡大で赤血球が5個以上となると,血尿とされ,原因精査が行われる。赤血球の形から糸球体由来か,それ以外かに分けられ,前者の場合,腎炎など糸球体病変の存在が示唆される。 その他,尿沈渣検査では,尿路感染時にみられる白血球,細菌のほか,糸球体障害のときなどにみられる円柱の有無も観察される。 3 血液検査 腎疾患では,血液を濾過する機能である糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)が低 下することがある。GFRの指標として最も広く用いられるのが,クレアチニンである。クレアチニンは,筋肉で産生され,腎臓からしか排泄されず,腎臓では,糸球体で濾過されるが,尿細管で分泌・再吸収をほとんど受けない。このため,GFRの指標として用いられる。GFRが低下すると,血清クレアチニン濃度は上昇する。筋肉量にも影響を受けるため,血清クレアチニンに筋肉量と関連する年齢・性別を加味した,推算糸球体濾過量(estimated GFR:eGFR,図1)が腎機能の指標として通常用いられる。 食事中・体内の蛋白に由来するアミノ酸は,アンモニアに代謝されるが,アンモニアは毒性が高いため,肝臓で尿素サイクル(→p.61参照)によって尿素へと代謝される。尿素もその名のとおり腎臓から排泄されるため,腎機能が低下すると上昇する。蛋白の代謝により作られる尿毒素の血中濃度と関連する可能性があり,尿毒症の指標として用いられる。しかし,高たんぱく質食,脱水など,腎機能以外の要因も受ける。 その他,腎不全では,貧血,高カリウム血症,高リン血症,代謝性アシドーシスがみられ,それぞれ血液検査で評価される。 4 腎生検(kidney biopsy) 血液検査,尿検査所見だけでは,腎疾患の確定診断には至らない。腎疾患の診断を確定するためには,糸球体や尿細管の状態を直接確認する必要があり,腎生検が行われる。腎生検では超音波ガ図1 推算糸球体濾過量・eGFR=194×Cre-1.094×Age-0.287女性では0.739を掛けるCre:血清クレアチニン濃度(mg/dL)Age:年齢(歳)イド下に生検針を腎臓に穿刺し,組織を採取する。光学顕微鏡,あるいは電子顕微鏡を用いて組織を観察し,糸球体における炎症の程度,原因(沈着している抗体の種類),尿細管・間質の障害の有無を評価する。 B 症状・徴候 1 高血圧(hypertension) 腎機能の低下により,ナトリウムの排泄障害,さまざまな液性因子の異常により,血圧が上昇する。一方,高血圧は腎障害の進展の原因としても重要である。糖尿病性腎症,蛋白尿が高度な場合には,130/80 mmHg未満へのコントロールが推奨されている。 2 浮腫(edema) ナトリウム貯留は,細胞外液の増加から浮腫をきたす。また,ネフローゼ症候群で,血清アルブミンが低下し,血漿膠質浸透圧が低下すると,血管外へ水・ナトリウムが移動し,浮腫がみられるようになる。一般的には,下腿前面,上眼瞼などにみられ,下腿前面を圧迫することで圧痕がみられる(圧痕性浮腫:pitting edema)。 3 多尿・乏尿(polyuria, oliguria) 通常,尿は1日1.5 L程度排出されている。これが2 L以上となったものを多尿と呼ぶ。一方,500 mL未満は乏尿(oliguria),100 mL未満を無尿(anuria)とよび,乏尿・無尿は腎不全のときにみられる徴候として,透析の要否を判断するうえでも重要な徴候である。また,尿路が閉塞し腎臓が産生した尿を体外に尿を排泄できない状態を尿閉と呼ぶ。尿閉も急性腎不全の原因となるため,早期の解除が必要である。 4 側腹部痛(flank pain) 腎臓の急性炎症である腎盂腎炎(pyelonephri-tis)や,腎動脈の閉塞による腎梗塞(renal Ⅴ.H.腎臓・泌尿器・生殖器系755Ⅴ

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