1生物学的基礎第1編 医学概論ⅠⅠことで内膜の面積が増大し,化学反応の場が増えてエネルギー産生が促進される。小胞体はリボソーム粒子が付着した粗面小胞体と,粒子をもたない滑面小胞体に区別される。リボソームはタンパク質の合成を,ゴルジ装置は分泌物質の合成と貯蔵を行う。中心体は2個の中心子が互いに直交して核の近傍に位置し細胞分裂を助け,リソソームは加水分解酵素を含み不要物質を分解処理している。 細胞質の中には細い管状構造の微小管や,より細い細糸が存在し,それらが立体的に絡みあって骨組みとなり細胞の機械的形態を維持したり,細胞小器官や細胞の運動に関わっている。微小管や細糸は細胞骨格と呼ばれる。 核は,核膜と核質からなり,核質には染色質と核小体がある。核は細胞に通常1個存在するが,哺乳類の赤血球は生成過程で核を失うので無核細図1 電子顕微鏡で見た細胞の微細構造第1編Ⅰ.G.人体の構造および機能107 A 細胞の構造と機能 1 細胞の微細構造と働き われわれの体の基本単位は細胞であり,同じような機能を営む細胞が集まって組織をつくる。組織は集合して器官となり,さらに器官が集まって系がつくられ,系が統一されて一つの個体が形成される。 人体は,一説では37兆個の細胞からなり,個々の細胞の形や大きさはその部位や器官によってまちまちで,球形,立方形,扁平形,星状形などさまざまな形状を示す。球形の細胞としては直径が数μmの小リンパ球が最も小さく,直径が200μmの成熟卵子が最も大きい。人体中で最大の細胞は坐骨神経で,仙髄(一部腰髄)から出て足先にまで至る長さは約1 mの細長い細胞である。 細胞の共通の構成要素を模式的に表わしたのが図1である。細胞は核と細胞質に大別され,細胞質は厚さ7~10 nmの細胞膜(形質膜)で包まれている。細胞膜はひだを作って表面積を大きくして,細胞内外の物質代謝を盛んにすると同時に膜電位の発生などに重要な働きをしている。細胞膜は電気的に絶縁性の高い脂質二重層でできているので,静電容量が1μF/cm2前後のコンデンサとみなされる。細胞質の中には細胞小器官が存在し,その間を流動性の細胞質基質が満たしている。 細胞小器官には,ミトコンドリア,小胞体,ゴルジ装置,中心体,リソソームや種々の顆粒がある。ミトコンドリアは内部に多数のひだを形成し,生命活動を営むのに必要なエネルギー源であるATP(adenosine triphosphate:アデノシン三リン酸)の合成・供給を行っている。ひだが多い医学概論G.人体の構造および機能
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