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3時間[ms]胞である。染色質は核質の大部分を占め,核分裂が始まると網状の染色質は細長い糸状かららせんを巻いて太く短くなり染色体となる。遺伝形質を決定する遺伝子は染色体上の特定の位置を占めているが,その本体はDNA(deoxyribonucleic acid:デオキシリボ核酸)と呼ばれる核酸である。核酸には,DNAとRNA(ribonucleic acid:リボ核酸)の2種類がある。RNAには伝令RNA,転移RNA,リボソームRNAがあり,これらはDNAの遺伝情報をもとにタンパク質を合成する。 複数の染色体が集まった1組の遺伝子群全体をゲノム(genome)という。ヒトの体細胞は23個(22個の常染色体と1個の性染色体)の染色体2組のゲノムからなるが,1組は父方,残りの半分の1組は母方に由来する。生殖細胞は1組のゲノムをもつ。 細胞は外界(外部環境)から隔絶された細胞外液(内部環境)の中に浸され,種々の外乱に対して温度,浸透圧,pHなどの環境が一定に保たれている。これを内部環境の恒常性(ホメオスターシスhomeostasis)という。細胞内液は細胞膜を介して間質液(組織液)と,間質液は毛細血管やリンパ管を介して血漿と,それぞれ水分(体液)の移動が行われている。 2 細胞の興奮 神経や筋の細胞に微小ガラスを刺入し,細胞外の電位を0電位と定めて細胞内の電位,すなわち膜電位を観察すると,細胞が静止状態にあるときは-100~-50 mVの一定電位を示す(図2)。これを静止電位という。この細胞内負電位は細胞内に多く存在するK+を細胞内に引き留める働きをしている。細胞が興奮すると棘状のスパイク電位が発生する。この膜電位の変化を活動電位という。静止電位よりも正方向の電位変化を脱分極,脱分極状態から静止電位に戻る過程を再分極という。静止電位よりも負方向の動きを過分極という。 活動電位は膜電位が一定レベルまで脱分極されると急激に起こる。このレベルを閾いき膜まく電位(閾値)という。ひとたび興奮すると活動電位の大きさは刺激の種類や量とは無関係に一定である。これを全か無の法則という。図2 静止電位と活動電位40膜電位[mV]0脱分極-40静止電位-8001245活動電位再分極過分極静止電位第1編 専門基礎科目108 B 組 織 1 上皮組織 上皮組織は,体の表面や体の内部にある管腔の内面を被い,細胞が密に集まってできている。皮膚はもちろん,消化管や気道の内壁,子宮や尿道の粘膜からなる。上皮には特定の物質を合成し細胞外に分泌する分泌上皮(腺)もある。上皮以外の組織を非上皮組織といって区別する。 2 支持組織 支持組織は骨組織,軟骨組織,結合組織に分けられる。結合組織の他の組織の間隙を埋めたり,靱帯や腱をつくる膠こう原げん組織や弾性組織のほかに,脂肪組織や細網組織(骨髄やリンパ節の実質)がある。 3 筋組織 筋組織は,収縮運動を行う筋細胞(筋線維)と筋細胞間を埋めるわずかの疎性結合組織からなり,これに血管と神経が分布する。筋組織は,線維に縞模様(横紋)の見られる横紋筋と横紋の見られない平滑筋に大別され,前者は骨格筋と心筋に分けられる(図7,図9参照)。機能的に心筋と平滑筋は意志により動かすことができない不随意筋であり,骨格筋は意志によって動かせる随意筋である。

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