図1 走査型トンネル顕微鏡を用いた原子の画像(大阪電気通信大学大学院 先端理工学コース 安江常夫教授提供)1電子回路 生体計測装置,治療機器,情報システムなどの多くの医療機器には,抵抗,コンデンサ,半導体素子などから構成される電子回路が用いられている。本項では電子回路素子,電子回路要素,アナログ回路,ディジタル回路,医用テレメータ・遠隔医療に関する通信工学について述べる。 A 回路素子 1 物質の構造と抵抗 物質を砕いていくと,これ以上分割できないものになる。これ以上分割不可能なものが存在するという考え方は,古代ギリシャ時代に「原子論」として提唱されている。「原子」は19世紀から20世紀にかけて確立され,英語でAtomといい,「これ以上分割できないもの」を意味する。 図1は走査型トンネル顕微鏡を用いて,半導体材料として広く用いられている物質(シリコン)の表面を観察した写真で,丸い粒子が原子を示す。右図が原子の並びのモデルであり,赤線で囲った菱形が右図の白線の枠に対応する。このような先端技術により原子が規則正しく並んでいることが観察できる。a 原子の構造 個々の原子の中はどうなっているか? ということを明らかにするために物理学者が研究を行い,原子に関する理論を確立した。原子構造のモデルを図2に示す。原子は原子核と電子から構成され,電子は原子核の周りの軌道に存在するというモデル(考え方)である。原子の半径は,10-10[m]で,原子核はプラス(正)の電荷,電子はマイナス(負)の電荷をもっている。原子核は,陽子と中性子から構成され,陽子にプラス(正)の電荷,中性子は電荷をもっていない。陽子の電荷量(プラス)と電子の電荷量(マイナSi(111)7×7 構造のSTM像Si原子Si(111)7×7の原子配列STMではこの原子のみが観察される(一番上にある原子)第1編 専門基礎科目第1編200医用電気電子工学B.電子工学Ⅱ
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