77184T
9/14

図1 物理的エネルギーを用いた治療における主作用と副作用の関係(臨床工学技士指定講習会テキスト 改訂第2編 医用治療機器学種々の治療効果が得られるが,熱湯につければ熱傷を起こすことは自明である。微弱な交流電流で筋肉を刺激すればマッサージ効果が得られるが,大電流が流れれば命取りにもなりかねない。 このように物埋的エネルギーを用いた治療機器については,常に“両刃の剣”の側面をもちあわせていることを,念頭において取り扱うべきである。各エネルギーの生体組織に対する安全限界値について,常に注意と勉強を怠ってはならない。 以上述べたように,治療機器については,常に使用状態において適正な出力が得られるようにしておかなければならないし,また使用者側が守るべき事項が,機器ごとに必ずいくつか存在する。これらの点を院内で教育し,かつ実地に指導して安全確保に努めることが,臨床工学技士に課せられた重要な役割である。極・アクティブハンドル,③対極板より構成される(図2,図3)。 原理は,対極板を生体に装着してアクティブ電極と生体間に高周波の高電圧(数千ボルト)を加えて高周波電流を流し,組織を切開,凝固する。このとき,アクティブ電極と生体が接触する部分用Mと副作用Sとの比M/Sを大きくすることが重要である。 癌の放射線療法において,しばしばtherapeutic gain factor(治療効果比)やtherapeutic ratio(治療可能比)という言葉が用いられるが,これらはまさに放射線の副作用による正常組織の損傷が,どこまで抑えられて癌を死滅させることができるかを直接表現している指標である。 治療に用いる物理的エネルギーとしては,表1に示したように多種類あり,それぞれ主作用と副作用の成因やメカニズムに差があるが,ごく一般的には,皮膚を通して生体内に伝達される物埋的エネルギーの密度が100 mW/cm2以上になると,生体に何らかの不可逆的な障害が生じるといわれている。 最も想像しやすい事例を引用すれば,適度の温水に手を浸せば末梢循環が促進され,温熱による2電気的治療機器第2版,金原出版,1990より引用)Ⅱ.医用治療機器学455Ⅱ(加納 隆) A 電気メス 1 原理・構造 電気メスは生体組織の切開,および出血部位の止血を行うための凝固を目的として使用される治療機器であり,①電気メス本体,②アクティブ電

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る