*Yuichi HORI 堀 裕一*東邦大学医療センター大森病院眼科1 ガイドライン作成に至る背景定義:ドライアイは,さまざまな要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり,眼不快感や視機能異常を生じ,眼表面の障害を伴うことがある。診断基準:以下の1,2の両者を有するものをドライアイとする1.眼不快感,視機能異常などの自覚症状2.涙液層破壊時間(BUT)が5秒以下眼疾患のガイドラインと診療指針解説とアップデートドライアイは,日本のみならず世界中で患者数の多いcommon diseaseである。わが国では2016年にドライアイの定義と診断基準が改訂され,「さまざまな要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり,眼不快感や視機能異常を生じ,眼表面の障害を伴うことがある」と定義された1)。診断基準に関しても,1)自覚症状と,2)涙液層破壊時間(BUT)が5秒以下となり(表1),それまでのSchirmer値や角膜染色スコア2)3)が診断基準に含まれなくなり,「涙液層の安定性低下」がドライアイの病態の中心であることが強調されてきた(図1)。わが国では,2010年にジクアホソルナトリウム点眼が,2012年にレバミピド点眼がそれぞれドライアイ治療点眼薬として上市さ表1わが国のドライアイの定義と診断基準(2016年版)れ,それまで外部からの水分補充しかなかったドライアイ治療において,涙液層のコンポーネントを改善させることで眼表面における涙液層の安定性を向上させる治療(眼表面の層別治療:TFOT)が実現できるようになった4)。ドライアイに対する治療選択については,ガイドラインができる以前からドライアイ研究会が中心となった学会活動や勉強会を通じてある程度のコンセンサスは構築されていたが,やはり,エビデンスに則ったしっかりとしたガイドラインの作成が必要であるという機運が高まり,ドライアイ研究会が主導して2015年6月19日に第1回ドライアイガイドライン作成委員会が開催され,正式にわが国で初めての(おそらく世界でも初めての)ドライアイ診療ガイドラインの作成が開始された。 ガイドライン作成委員会本ガイドライン作成委員会は島﨑 潤先生(東京歯科大学市川総合病院)を委員長として,4名の統括委員および30名の委員から構成された。当初より,evidence-basedの診療ガイドラインを作成することを目標としており,当時としてはあまり知られていなかったMinds形式に則って作成しようという話が出て,筆者を含めて委員全員でMindsについての勉強会を複数回行った。本ガイドラインでは23個の診療上の重要課題1229内容の解説ドライアイ診療ガイドライン1
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