2現在,日本におけるドライアイ治療は,点眼としてジクアホソルナトリウム点眼,レバミピド点眼,ヒアルロン酸点眼,人工涙液を軸として使用し,症状が強い患者や炎症所見が強い患者に対しては低力価ステロイド点眼を1日2〜3回行う。また,涙液量をさらに増やしたいときには涙点プラグや涙点閉鎖術といった外科的な治療を加えることが行われている。重要なことは,これらの治1233 ドライアイと眼科手術,全身疾患治療との関係今回のCQで取り上げられたもののなかに眼科手術とドライアイの関係が挙げられている。角膜上皮障害とBUTの低下は眼内外の前眼部手術全般によって誘発される可能性が高く,また角膜切開もしくは切除を行う手術では,涙液分泌量が低下するとされている。以前から白内障手術後の不耐症のひとつとしてドライアイまたはドライアイ症状の悪化がいわれており,術前からのドライアイの有無をみておくことが重要である。一方,全身疾患治療(内服,手術)とドライアイの関係としては,頭頸部放射線治療で16.34倍,骨髄移植で4.06倍とドライアイのリスクが高くなり,抗うつ薬,抗不安薬などの精神疾患の治療薬や,β遮断薬,Caチャンネルブロッカーとの関連もオッズ比が1〜2倍程度となっている。また,ドライアイのリスクを下げることが期待できる内服薬として,ビタミン剤内服,オメガ3脂肪酸内服が挙げられている。 トピックス,患者さんからの質問今回のガイドラインでは,23項目のCQのほかに,CQでは取り上げない臨床的に有用な項目が「トピックス」や「患者さんからの質問」という形で紹介されている。「ジクアホソルナトリウムとレバミピドの使い分けは?」⇒ジクアホソルナトリウムは結膜上皮細胞から水分を分泌させ,結膜杯細胞からの分泌型ムチンの分泌を増やす。一方,レバミピドはもともと粘膜保護薬として内服で使用されていた経緯から,眼表面粘膜を改善させる薬剤である。以上の作用機序の違いから,ジクアホソルナトリウムは涙液の改善に寄与し,レバミピドは上皮の改善が期待される点眼といえる。症例によっては両者を併用する場合もある。また,両者とも膜型ムチンの発現を増加させることが知られており,膜型ムチンの発現が低下する「水濡れ性低下型ドライアイ」に有効である。「ドライアイの点眼の順序,間隔は?」⇒基本的に,水性点眼剤→懸濁性点眼剤→眼軟膏の順番とし,各点眼は5分間隔を開けることが推奨されている。ジクアホソルナトリウムとヒアルロン酸を併用する際の順番については,ヒアルロン酸の眼表面ムチンとの相互作用による涙液層の安定化作用を期待してジクアホソルナトリウムを先に点眼し涙液中ムチンを増やしておいて,あとからヒアルロン酸を点眼するのがよい。しかしながら,ジクアホソルナトリウムによる刺激がある場合には,ヒアルロン酸を先に点眼してあとからジクアホソルナトリウムを点眼するのがよいとされている。療を闇雲に用いるのではなく,ドライアイのサブタイプ分類をしっかりと行い,各病態に合った治療を選択すべきである。正しくサブタイプ分類を行うためにはフルオレセイン染色でのブレイクアップパターンを観察することが重要で,日頃からフルオレセイン染色をしっかりと行う習慣をつけておく必要がある。診療に活用するポイント
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