2本邦において,黄斑部に毛細血管拡張および毛細血管瘤を伴った黄斑浮腫があれば,糖尿病網膜症や陳旧性の網膜静脈閉塞を除けばMacTel type 1である可能性は高い。疫学的には欧米ではMacTel type 2が最も多いと報告されているが,本邦ではtype 1が多く,type 2は少ないとされている2)3)11)。MacTel type 2は50〜60歳代に多く発症し,男女差はない。ほぼ全例で両眼性である。現時点では,非増殖期における確立された治療はないが,多施設研究であるMacTel Project12)において初診時の平均視力は0.5であり,1.0以上が16%,0.6以上が約半数と視力予後はそれほど悪くないとされている。図4同一症例のred free黄斑部に楕円形の高反射像(confocal blue reflec-tance:CBR)がみられる。1347一方で,本疾患では毛細血管拡張,毛細血管瘤およびretinal cavityがあるため,疾患に関する知識が不足していると,MacTel type 1として積極的な治療が行われてしまう可能性もある。非増殖期における黄斑部へのレーザー治療は,これはあまり知られていないが,red free画像で,黄斑部にリング状もしくは横楕円形の高反射像を示す(図4)。この所見はconfocal blue reflec-tance(CBR)と呼ばれ,MacTel type 2に特異的であり,病初期から認められるため診断に有用である10)。 また鑑別疾患として,MacTel type 2では眼底に毛細血管拡張がみられるが,毛細血管拡張自体は網膜血管炎や血管閉塞疾患でもみられるものであり,さらに進行例では色素沈着やSRN,網膜出血を伴うため滲出型加齢黄斑変性との鑑別が重要である。ガイドラインでは具体的に陳旧性網膜静脈分枝閉塞症,放射線網膜症,滲出型加齢黄斑変性〔網膜内血管腫状増殖(RAP)含む〕,タモキシフェン網膜症が挙げられている。SRN形成を含む増殖期への進行を促す懸念もあり基本的に行われるべきではない。また,本疾患の毛細血管異常自体は2次的なもので,Müller細胞の変性が疾患の首座であると考えられており,ときに黄斑円孔を生じることもある。これもMacTel type 2に付随して生じているのか,特発性の黄斑円孔と診断するかで,治療における積極性や予後に関しても違ってくる。さらに,本疾患では進行し増殖期となるとSRNを生じる。これは滲出型加齢黄斑変性とは異なり網膜色素上皮の隆起や不整は基本的には生じない。RAPとは毛細血管異常の部位や範囲,ドルーゼンがないこと,発症年齢からも鑑別は可能だが,増殖が強いと判断が難しい場合もある。上記のように,本疾患は網膜全層にわたって異常が生じる疾患であり,そのいずれもが本疾患の特徴を理解していれば一元的に考え得るものである。しかし,繰り返し述べているが,本疾患は本診療に活用するポイント
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