211処置中の急変に対して迅速に対応するためには,にはCPR(cardio-pulmonary resuscitation)を開始する。CPRについては,定期的に訓練を行うことが勧められる。このような急変対応を行うことは,クリニックや眼科専門病院においては極めてまれであると考えられる。このような施設においては,シミュレーション教育の有用性が報告されている。シミュレーションを行うことで,受講者が「BLSを行うことができる」という回答率や,AED(automated external defibrillator)の設置場所の正答率が上昇し2),手術室におけるハード面での問題点が明らかになる3)。継続的なシミュレーションを行うことは,急変時の対応力を向上させるために有効と考えられる。急変対応を行うためには必要な機材や薬剤を整備することも重要である。急変時に用いられる機材や薬剤をまとめた救急カートを用意し,定期的に内容の確認を行う必要がある。救急カートに用意すべき物品の例を表1および図1〜4に挙げる。迷走神経反射による失神5)迷走神経を介した反射性失神は,失神の最も多Treatment for complications during ophthalmic examination and surgery眼科処置室・手術室においては,局所麻酔(点眼麻酔・神経ブロック)や全身麻酔下で診察・処置,手術が行われる。その際,軽症なものから救命処置を要するものまで,さまざまな合併症が起こり得る。本稿では,処置や手術中に起こり得る急変に対する対応について概説する。なるべく早期に急変や,その予兆を覚知することが必要である。局所麻酔・全身麻酔下の手術では標準的なモニタリング(心電図,非観血的血圧計,経皮的酸素飽和度モニタ)を行う1)。診察や処置の際には,定期的な声掛けによる反応の確認や,視診による呼吸運動の確認などが有効である。覚醒下で処置を行っていた患者の反応が乏しい,あるいは呼びかけに反応しなくなった場合,まずはBLS(basic life support)アルゴリズムに基づいた処置を行う。いずれの場合にも,すぐに周囲に異常を知らせ,応援を要請することが必要である。意識がなく,呼吸・脈拍が確認できない場合山下 敦* 岡本浩嗣**Atsushi YAMASHITA,Hirotsugu OKAMOTO 北里大学医学部麻酔科学教室1153代表的な合併症1)4)はじめに急変の覚知とシミュレーション教育,救急カートの整備6検査中の迷走神経反射に対する処置
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