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1後嚢破損は熟練した術者でも必ず遭遇する白内障術中合併症である。想定外に発生するが,重要なことは早く気づき,後嚢破損を拡大させないことである。表1に後嚢破損時の考え方について概要を示した。表を見ながら対処法を整理しておくと流れが把握しやすい1)2)。1白内障手術はさまざまな技術の進歩によって安全な手術となった。しかし,術中に発生する予期できない後嚢破損や核落下は,術者を困惑させる。経験はしたくないが,遭遇した場合は追加器具の準備と手術戦略が重要であり,発生した時こそ集中力のギアを1段上げて,確実に対応したい。後嚢破損は核処理時でも皮質吸引時でも発生する。水晶体核や皮質を吸引しようとしたときに,核や皮質がいつもと異なる動きを生じたら,後嚢破損を疑う。硝子体は透明な組織なので,後嚢破損初期では見逃しやすい。硝子体脱出が進行してしまうと,対処が難しくなる。できるだけ早く,松島博之**Hiroyuki MATSUSHIMA 獨協医科大学眼科学教室後嚢破損に気づき,硝子体を脱出させないで処置を行うことができるかが要点となる。初心者でよくある間違いが,後嚢破損に驚いて超音波チップやI/Aチップなどを創口から抜去してしまうことである。器具を引き抜いてしまうと,前房が虚脱し,硝子体が後房から眼外に脱出してくる。脱出した硝子体は戻せない。まず手術操作を止めて,後嚢破損がどこに生じていてどのくらいのサイズであるかを確認する。ここで冷静に今後行うべき手術戦略を考える。皮質吸引のみ残っているのか,超音波の途中なのか,手術の進行段階によっても対処方法が異なる。考えを整理しつつ,眼粘弾剤で前房を置換しながら硝子体脱出を予防して,操作中の器具を眼外に引き抜く。眼粘弾剤を注入するときは灌流を止めないと眼内圧が高く,眼粘弾剤が前房中に入っていかない。次に手術時間が延長するので,患者に説明し,麻酔の追加と必要な器具の準備を外回りに指示する。脱出硝子体を切除するのであれば,硝子体カッターと灌流を確保するためのポート,脱出硝子体を染色するマキュエイドⓇ(わかもと製薬)希釈液,縮瞳用のオビソートⓇ(第一三共)希釈液,嚢外固定・強膜内固定用の3ピースIOL(眼内レンズ)も準備を進める。Intraoperative complications of cataract surgery(posterior capsule rupture, dropped nucleus)状況整理と準備968はじめに後嚢破損が発生した時の考え方5白内障術中合併症(後嚢破損・核落下)

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