1白内障・眼圧上昇:トリアムシノロンアセトニド(triamcinolone acetonide:TA)は長期にわたり消炎効果を示す反面,ステロイドの副作用も現れやすく,白内障・眼圧上昇をきたしやすい。特に小児・若年例では眼圧上昇を起こしやすいことに加え,白内障をきたし手術に至った場合では調節機能を失うことになる。2白内障・眼圧上昇:TAの眼周囲注射の適応範囲は小児・若年の患者では必然的に狭くなる。遷延性ぶどう膜炎の増悪期の一時的な炎症の緩和治療として用いられることがあるが,漫然と繰り返すのではなく,TAの局所注射が功を奏している間に一手先を読んで,免疫抑制薬の全身投与〔メトトレキサート,シクロスポリン,抗TNF(tumor necrosis factor)製剤〕の導入を検討し,ステロイドの眼周囲注射はステロイド全身投与に伴う副作用の出現を回避できることや,高濃度のステロイドを直接炎症部位に届けるといった長所を持っている反面,手技,ステロイドの副作用による合併症が認められる。適切な手技と適切な症例選択により合併症を最小限にすることが重要である。炎症の増悪:トキソプラズマ網脈絡膜炎や真菌性眼内炎などの感染性ぶどう膜炎に対して後部Tenon嚢下注射を施行した場合,局所の免役能の低下により感染が助長され炎症所見の急激な増悪を生じる恐れがある。眞下 永**Hisashi MASHIMO JCHO大阪病院眼科(大阪府)感染症:TAのTenon嚢下注射後の表皮ブドウ球菌や真菌感染などの報告がある(図1)。眼瞼下垂:上方に注射した際には眼瞼下垂のリスクが高くなるとされている。強膜穿孔:強膜炎に対するステロイドの結膜下注射は強膜壊死,穿孔をきたすとのことで禁忌とされてきたが,近年,TA局所注射が非壊死性強膜炎に対して有効であるとの報告が多数なされている。鋭針を使用してのTAのTenon嚢下注射は逆流のリスクがない反面,眼球穿孔のリスクは高くなる。眼動脈へのTAの誤注入:鋭針でのTAのTenon嚢下注射時に起こった報告がある。Periocular injection of triamcinolone acetonide1028知っておきたい 眼科処置・手術の合併症対策と予防Ⅳぶど膜うはじめに合併症の種類対策・予防2ステロイドの眼周囲注射
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