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AB図170歳女性眼窩悪性リンパ腫疑いにより紹介受診(A),摘出手術時に排膿あり(B),培養検査において真菌の一種であるExophiala dermatitidisが検出された。4か月前に前医で糖尿病黄斑浮腫に対して上耳側にTAのTenon嚢下注射を施行されている。(近畿大学病院 岩橋千春先生のご厚意による)必要と判断した際には全身スクリーニング検査を行う。   またTAのTenon嚢下注射の際には結膜の輪部へのTAの逆流が起こらないように,マイクロ剪刀で鈍的に強膜からTenon嚢を剥離し,ポケットを作成することが重要である。シリンジのピストンを押す際に抵抗があれば,抵抗の小さくなる部位まで鈍針の針先を深く進めるか,再度異なる部位にポケットを作成して注射する。眼圧上昇は注射2週後から6か月後に多いとされている。注射後は診察間隔を密にして診察することが重要であり,眼圧下降薬点眼でコントロールできない際はタイミングを逸することなく選択的レーザー線維柱帯形成術や線維柱帯切開術などの手術を検討する必要がある。炎症の増悪:TAのTenon嚢下注射後,感染症が判明したとしてもTAの除去は困難であり,免疫抑制作用を停止させることができない。注射前に感染性ぶどう膜炎を除外することが重要であることは言うまでもない。少なくとも採血でトキソプラズマ抗体価,β-d-グルカンの確認は行っておくべきである。感染症:ポビドンヨードによる洗眼を行うことが重要である。術後は抗菌薬点眼を処方する。特に糖尿病などの易感染性がある場合には感染症を念頭に置いて経過観察するべきである。眼瞼下垂:できるだけ投与部位を下方に限局して行う。眼瞼下垂を予防する目的もあるが,今後施行する可能性のある濾過手術を念頭に置いて上方結膜を温存するべきである。強膜穿孔:壊死性強膜炎にステロイド局所注射を行わないこと,Tenon嚢下注射の際は鈍針で行うことで回避することができる。眼動脈へのTAの誤注入:鈍針を使用してTenon嚢下注射を行うことで回避することができる。1029

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