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2術前に垂直方向と水平方向の弛緩の有無を評価1眼瞼内反症にはさまざまな原因があり,日常臨床では加齢による退行性眼瞼内反と慢性炎症などによって眼瞼後葉が短縮することによる瘢痕性眼瞼内反の頻度が高い。下眼瞼を下方に牽引すると内反がいったん解除され,瞬目によって再発する場合は退行性と診断する(図1)。一方,牽引しても内反が解除されないか,いったん解除されても次の瞬目を待たずに内反する場合は瘢痕性と診断できる。また,瞼板自体が眼球側に回旋しているかどうかを確認しておくことも重要である。眼瞼内反は,瞼板の位置が正常で睫毛のみが内反している睫毛内反とは病態や術式も異なるので混同しないようにされたい(図2)。通常の下眼瞼では瞼板が垂直方向と水平方向に適度に牽引されている。垂直方向の支持組織は下眼瞼牽引筋腱膜lower eyelid retractors(以下LERs)で,水平方向の支持組織は内眥靱帯と外眥靱帯である。退行性眼瞼内反の主な病因は垂直方向や水平方向の支持組織の弛緩であり,それらの牽引のバランスが崩れることで眼瞼が内反すると考えられている。し,それに応じた術式を選択する。垂直方向の評価にはfornix fat prolapseがある1)(図3A)。下眼瞼を下方に牽引し,円蓋部に眼窩脂肪が突出しているかを確認する。眼窩脂肪の突出は弛緩したLERsを介してみられるため,垂直方向の弛緩を示すサインと考えられている。水平方向の評価には以下の4つの指標がある。Pinch testは下眼瞼を前方に牽引し,眼球とのEntropion repair眼瞼内反症とは,瞼板が眼球側に回旋し,睫毛や瞼縁の皮膚が角結膜に接触することで異物感や眼脂,流涙,眼痛,羞明,視力低下などをきたす状態をいう。放置すると角膜障害が進行することがあるため,適切な時期に外科的治療を検討する。術前の評価で内反の原因を的確に把握し,それに応じた術式を選択することで術後の再発率を低下させることができる。本項では日常臨床で最も遭遇する頻度が高い,退行性(加齢性)眼瞼内反に対する眼瞼内反症手術について解説する。森田耕輔* 今川幸宏**Kosuke MORITA,Yukihiro IMAGAWA 大阪回生病院眼形成手術センター(大阪府)1085はじめに適応となる疾患や病態術前評価と術式選択2眼瞼内反症手術

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