2腱膜性眼瞼下垂は,眼瞼挙筋は正常に機能しているが,その力を眼瞼に伝える組織が加齢や機械的刺激により伸展することで生じると推測される。瞼板上縁付近にあったと考えられるwhite line(WL)と呼ばれる眼瞼挙筋腱膜前層と眼窩隔膜の合流部が頭側に偏位している術中所見は,本症の病態を裏づけるものである2)。したがって,手術ではMüller(ミュラー,瞼板)筋,眼瞼挙筋腱膜後層,眼瞼挙筋腱膜前層あるいは眼窩隔膜のいずれかを,単独もしくは組み合わせて利用し,WLを本来の位置に戻すことになる。これらは一般的に眼瞼挙筋前転法と称される術式であり,利用する組織によりMüller筋タッキング,挙筋短縮術1形成外科診療ガイドライン2021年度版1)には,者の自覚症状などの定性的な評価基準を加味する必要がある。つまり上記に加え,下顎挙上や患者からの機能障害(視野狭窄など)の訴え,眼瞼が原因と考えられる不快感などを併せ持つ場合が手術適応と考えられる。なお,上記はあくまで瞼縁が下垂する眼瞼下垂に関しての基準であるが,瞼縁を超えて皮膚が下垂する皮膚弛緩症や眉毛下垂にも準用できる。Blepharoplasty眼瞼下垂は第一眼位における上眼瞼縁と瞳孔中心との距離(上眼瞼縁角膜反射間距離margin re-flex distance-1:MRD-1,以下MRD)で規定される疾患で,MRDの低下に伴う機能障害を患者が訴えたときに手術適応となるが,術後にはMRDの改善のみでなく,整容面の改善も患者の満足を得るには必要となる。本稿では,臨床で最も経験する機会の多い腱膜性眼瞼下垂について,合併率の高い皮膚弛緩症の対処方法も含め,整容面を考慮した手術のポイントおよび治療のプランニングの考え方を記載する。後天性眼瞼下垂の手術適応として,一番目にMRDが2mm以下と記載されているが,正常から病的になるまで,一部の病態を除きゆっくりと連続性をもって進行するため,患者自身が順応し,病識に乏しいことも多い。よって,数値だけで手術の必要性を明確に規定することは難しい。そこで,手術の決定には定量的な評価基準とともに患村上正洋**Masahiro MURAKAMI まぶたとヒフのクリニック 千駄木プラザ形成外科(東京都)・日本医科大学形成外科/眼科1093はじめに手術適応手術方法3眼瞼下垂手術
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