040252022095T
1/10

Ⅰ腟生殖器の課題1 性分化過程の障害による疾患群であり,染色体,性腺,または解剖学的性(内性器の性および外性器の性)が非定型的である先天的状態と定義される4)。性染色体の遺伝情報と性腺,外性器・内性器といった表現型が合わない病態が生じ,多彩な疾患をもたらす。発症頻度はおよそ1.性分化異常と妊娠生殖結節尿道溝肛門膜ジヒドロテストステロン陰囊陰囊縫線肛門図2 内性器および外性器の分化産婦人科の実際 Vol.71 No.10 2022(9)1029卵巣卵管子宮内性器未分化性腺中腎ミューラー管ウォルフ管テストステロンAMH精巣上体精巣精管精囊前立腺外性器尿道ヒダ陰唇陰囊隆起亀頭生殖結節尿道溝尿道ヒダ陰唇陰囊隆起肛門陰茎亀頭陰核外尿道口小陰唇腟口大陰唇殖結節)から分化する陰茎・陰囊または陰核・陰唇である。 内性器および外性器の分化は,ホルモン作用の有無による。胎児期の精巣は,2つのホルモン,アンドロゲンと抗ミュラー管ホルモン(anti-müllerian hormone;AMH)(ミュラー管抑制因子)を分泌する。内性器原器であるウォルフ管はアンドロゲン作用により男性内性器に分化し,ミュラー管はAMH作用により退縮する。一方,胎児期の卵巣はホルモンを分泌せず,2つのホルモン作用がないとウォルフ管は自然に退縮し,ミュラー管は自然に女性内性器に分化する。外性器原器である生殖結節はアンドロゲン作用により男性外性器に分化し,ホルモン作用がないと自然に女性外性器に分化する(図2)3)。4,500人に1人,年間300人とされ少なくない。生まれたときに,外性器がほかの大部分の男性や女性とは異なっている場合に,性分化疾患は疑われるが,生まれたときには気づかれず,思春期後半の年齢になってもほかの大部分の男性や女性のような二次性徴がみられない,あるいは進行が遅いことでみつかる疾患もある。 生後まず法律上の性を決めなければならない。日本では戸籍法により,親権者は出生後14日以内に氏名と性別を登録する義務を負っている。生まれたときに,外性器がほかの大部分の男の子や女の子とは異なっている場合に,性分化疾患は疑われる。実際には,男性に近い型から女性に近い型まで様々なタイプの外性器がみられ,診断に多くの検査も必要となる。法律上の性は社会生活上の基盤となり,生涯その個人について回るものなので,その決定は慎重に行わなければならない。性分化異常は出生時には先天性副腎過形成など生命予後に直結する疾患の鑑別が重要かつ新生児外性器異常症例は社会的,養育上,法律上の性を迅速かつ適切に判断する必要があり,家族にとっても重大な問題となる。性分化異常の経験豊富な施設にて専門医のもと,コメディカルを含めたチームでの診療性分化疾患

元のページ  ../index.html#1

このブックを見る