1270(250).ホルモン治療法図2 エストロゲンの作用(黒字)とエストロゲンの過不足に関連する症状・疾患(赤字)が少なく,深部静脈血栓や脳卒中のリスクは少ないとされている3)。ただし血管内皮機能に対しては,経皮および経口とも改善効果がみられる3)。 エストロゲン作用に拮抗する黄体ホルモンを用いずにエストロゲンを単独で長期間使用すると,子宮内膜が増殖し子宮内膜増殖症や子宮内膜癌の発生のリスクが高くなるので,黄体ホルモンの併用は必須となる。なお10~12日間の黄体ホルモン併用で上記のリスクは最小化する6)。その点も考慮して,合成黄体ホルモンが配合されているエストロゲン製剤がある。代表的なエストロゲン・プロゲスチン配合剤はOC/LEPであるが,これは含有プロゲスチンの内膜抑制作用のみならず排卵抑制作用にも期待している。その他のエストロゲン・プロゲスチン配合剤には,更年期障害や卵巣欠落症状に伴う血管運動神経症状を適応とするものもある。なお,子宮が存在しない場合は黄体ホルモンの併用は不要である。 表1にあるように,エストロゲンの補充を目的にしたエストロゲン製剤の主な適応は,更年期障害,卵巣欠落症状(に伴う血管運動神経症状),骨粗鬆症となる。本稿の趣旨に沿って,AYA世代に対するエストロゲン製剤の適応と使用方法を以下に概説する。 一般的に,更年期・周閉経期と比べて,思春期以降のAYA世代が必要とするホルモン量は多い。しかし,その適切なホルモンレベルおよびホルモン療法のレジメや効果については,必ずしも高いエビデンスに基づいたコンセンサスは得られていない。AYA世代に対しては,閉経後のホルモン補充療法に用いられるエストロゲンの倍量を用いるのが1つの目安とされてい・総コレステロール減少・LDLコレステロール減少・HDLコレステロール増加・SHBG(性ホルモン結合グロブリン)増加・水分貯留・子宮内膜増殖・子宮筋肥大・増殖・頸管粘液分泌増加,粘稠度低下(牽糸性増大)・子宮内膜症・子宮腺筋症・子宮筋腫・子宮内膜増殖症・子宮内膜癌骨・骨吸収抑制・骨形成促進・骨減少症・早期骨端閉鎖乳房・乳管発育促進・乳輪発達・妊娠中の乳汁分泌抑制・乳管過形成・乳癌肝臓・膵臓・代謝・メタボリックシンドローム・肥満・インスリン抵抗性子宮・GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)分泌調節・神経保護作用・記憶改善・情動・認知・気分改善・神経変性・認知・情動障害・ホットフラッシュ・排卵障害・月経異常・動脈硬化発症予防・血流改善・動脈硬化・虚血・高血圧・血栓症・卵胞発育・卵管運動性亢進・腟上皮の多様化・角化,上皮内のグリコーゲン増加・多囊胞性卵巣症候群・排卵障害・萎縮性腟炎・皮膚コラーゲン量増加・毛発育促進・皮膚老化・感染・創傷治癒遅延・脱毛脳神経系心血管系卵巣・卵管・腟皮膚・毛AYA世代に対するエストロゲン製剤の適応と使用方法2
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