21.DVの現状と病理 DVは親密な関係にあるパートナーからの暴力である。身体的暴力,心理的暴力,性的暴力により怖がらせ,支配することがその本態である。具体的な暴力の例を表1に示す。婚姻関係にある場合をDV,交際中のものをデートDVという。 DVの専門相談機関である配偶者暴力相談支1178(158)Ⅶ.性暴力表1 DVの暴力の種類と具体例身体的暴力殴る,ける,たたく,物を投げる図2 DV被害による生活上の変化つきとばす,首をしめる髪の毛をつかんで引きずる性交の強要,避妊に協力しない自分の性癖を押しつける中絶を強要する/中絶させない性的暴力心理的暴力無視する大声で怒鳴る目の前で物を投げたり壊したりする「誰のおかげで食べられると思っているんだ」とおどす大切にしているものを壊す働かない,貢がせる(生活費を渡さない)「家のことがおろそかになるなら仕事をやめろ」と仕事をやめさせる友人や親族との付き合いを制限し,孤立させる不機嫌,舌打ち行き先を細かくチェックする,メールや電話の履歴をチェックする夜眠れなくなった自分に自信がなくなった心身に不調をきたした別居した生きているのが嫌になった・死にたくなったフラッシュバック誰のことも信じられなくなった人付き合いがうまくいかなくなった電話番号・アドレスの変更,SNSアカウントを削除医療機関を受診し精神疾患と診断された仕事を休んだ・やめた・変えた外出が怖くなった異性と会うのが怖くなったその他5012.712.46.64.14.13.93.632.88.8101523.721.218.715.22025(%)援センターへの相談件数は年間約13万件に上り,増加傾向にある。しかし内閣府の無作為抽出調査では,女性の4人に1人がDVまたはデートDVの被害経験をもっており1),暗数は多いと推察される。 身体的暴力であれば被害者も暴力であることに気づきやすいが,心理的暴力はDVとして気づかれにくい。一度激しい暴言や身体的暴力を受ければ,被害者は再度暴力をふるわれずにすむよう,加害者に従うようになる。加害者は被害者の人格を否定するような発言を繰り返し,反論しようとすると声を荒げたり舌打ちをしたり不機嫌になったりすることで被害者を支配し続ける。被害者はマインドコントロールされていき,「自分が悪いから暴力を受けるのであり,自分だけ我慢すればよい」と考え,逃げる選択ができなくなる。 DVにより常に暴言などに怯えていると,心身の不調をきたすようになる。内閣府の調査によると,DV被害者は図2に示すような心身の不調や生活への影響を受けているが,それがDVによる影響だと気づいていないことも多い。 そしてDVのほぼ全数に性暴力があるが,ほとんどが性暴力とは認識していない。しかし,図1に示したとおり,性暴力の加害者で最も多いのは交際相手・元交際相手または配偶者・元配偶者である。DVの性的暴力を主訴として産(文献1より作成)DV・デートDV
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