Q 肥厚性瘢痕・ケロイドの予防方法は?Q 創傷治癒過程は?小松宏彰*(執筆協力:OGOG projectメンバー) 大前提として,われわれ医師は法的にヒトに『きず』をつけることが許されている唯一無二の職業である。産婦人科医は女性の身体にメスを入れることになる。産婦人科医で最も多い手術は帝王切開術であり,胎児娩出にはそれなりに大きな『きず』を要する。また,婦人科悪性腫瘍手術において,広汎子宮全摘出術や傍大動脈リンパ節郭清を要する子宮体癌ⅠB期以上の症例,卵巣癌のstaging手術などにおいては少なくとも10 cm以上の『きず』をつけなければ,十分な視野確保のもとで適切な手術を行うことができない。さて,筆者はこれまで開腹時の解剖構造やその意義,そして閉腹時に必要な手技や術後の『きず』の管理についてエビデンスに基づいて十分に指導を受けた記憶はない。そして,指導していただいた管理方法は指導医たちにとってもあくまで経験に基づいた方法であるに違いない。これらは筆者の感覚だけではなく,日本全国のほとんどの産婦人科医がそうだと思う。そのようななか,全国の若手~中堅産婦人科医を対象に産婦人科医から産婦人科医へ適切な創部管理を学ぶプロジェクトを,ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社のご支援を得て,2021年夏に立ち上げた。このプロジェクトを産婦人科医(Obstetrician and Gynecologist;OG)から産婦人科医(OG)へという意味を込めて,「OGOG project」と称している。このプロジェクトでは,日本医科大学形成外科教授の小川令先生より肥厚性瘢痕・ケロイド形成の原因や治療法,管理などについて筆者が直接ご指導いただき,実践しながら得た経験と知識を,過去に産婦人科医のリクルート活動をともにした仲間へ伝授してきた(図1)。近年,低侵襲手術が増えてきたが,創部が小さくても肥厚性瘢痕・ケロイドは形成さ産婦人科の実際 Vol.72 No.12 2023* H. Komatsu 鳥取大学医学部附属病院女性診療科群1187は じ め にuestion子宮頸癌子宮体癌卵巣癌外陰癌腟癌その他開腹手術の皮膚切開・閉創―開腹と閉腹の基本を知っていますか?―
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