1手術手技Q 婦人科腫瘍医が行う直腸切除の方法は?Q 縫合不全に対する予防法と対応方法は?産婦人科の実際 Vol.72 No.12 2023* S. Tate, K. Nishikimi, A. Matsuoka, S. Otsuka, K. Koga 千葉大学大学院医学研究院生殖医学講座1333楯 真一* 錦見恭子* 松岡 歩* 大塚聡代* 甲賀かをり* 進行卵巣がんに対する治療は一連の術前化学療法の臨床研究1)~4)により,primary debulking surgery(PDS)とinterval debulking surgery(IDS)はほぼ同等の治療成績であったと報告された。進行卵巣がんでは大量腹水を伴い小腸播種が著明な場合,確かにIDSがそのメリットを最大限に生かせると思われる。しかし,大量腹水や小腸播種を伴わない骨盤内に限局した局所進行卵巣がんでしばしばダグラス窩は閉鎖しており,直腸との合併切除が必要である。IDSでは化学療法が先行することで組織の線維化により骨盤手術解剖が崩れ,「腔」の展開,「層」の剝離が困難になり手術切除範囲が不明瞭化するため,可能であれば局所進行卵巣がんではできるだけPDSで摘出するように心がけている5)6)。一方で,直腸は化学療法を行ったとしても最も化学療法後もがんの残存が多い部位の1つであるので7),IDSを行っても低位前方切除は必要であると考えられる。よって卵巣がん手術において,低位前方切除は非婦人科領域の手術で最も重要な術式といえる。われわれが行っている卵巣がんに対する低位前方切除術の手技と縫合不全の対策について紹介する。 直腸癌手術ではtotal mesorectal excision(TME)が基本となるが,卵巣がんの病変はダグラス窩をはじめとした腹膜などTMEの外側に位置するため,TMEの概念が卵巣がん手術には必ずしもあてはまらない。局所が進行した卵巣がんの場合,bulkyなその他卵巣癌uestion子宮頸癌子宮体癌は じ め に外陰癌腟癌直腸低位前方切除術
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