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図1赤色;切離ライン。 本稿では,卵巣癌に対する上腹部手術である「脾臓摘出術・膵尾部切除術」について解説する。本術式は,進行卵巣癌初回手術であるPDSやIDSにおいてだけでなく,再発卵巣癌に対する腫瘍減量手術(secondary debulking surgery;SDS)においても施行することがある。また稀ではあるが,腹膜播種を有する子宮体癌ⅣB期に対しても行うことがある。本術式を施行する際に,婦人科腫瘍医は脾臓や膵尾部を切除することを目的にするのではない,脾臓や脾門部への播種や転移巣を切除することを目的にしているはずである。婦人科腫瘍手術における脾臓摘出術・膵尾部切除術の注意点についても述べたい。 脾臓,膵臓尾部,胃,結腸脾彎曲部,左腎臓,左副腎は近接している。これらの臓器を,層構造を意識しながら切離・剝離を行うことで分離していく(図1)。1)膵臓・脾臓周囲の動脈・静脈の解剖(図2) 膵体尾部は主に脾動脈の分枝によって血管支配されている。脾動脈は腹腔動脈から分岐後,膵臓の頭側を走行する → 膵体部中央付近で膵背側を走行する → 膵尾部で膵上縁を乗り越えて膵前面を走行する → 膵尾部と脾門部の間を走行する。脾動脈は脾門部で脾臓上極や下極に向かって4~5本の分枝を分岐し,左胃大網動脈へと連続する。ただし,分枝の数や分岐する位置については症例ごとに異なる。 膵体尾部からの静脈還流を主として担う脾静脈は,膵体部中央では膵実質に埋まり1360卵巣癌脾臓転移に対する脾臓摘出術・膵尾部切除術の切離ライン 1脾臓・膵尾部の解剖

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