040252023115T
2/18

脂肪層(浅筋膜)深筋膜筋肉図6閉創は浅筋膜を適切に縫合することで真皮への張力を回避することができる。表皮真皮 閉創の基本は開腹前の状態に戻すことである。開腹時の解剖を改めて見返しておく必要がある。肥厚性瘢痕予防に最も重要なのは浅筋膜の縫合によって真皮への張力を極限にまで減らす努力をすることである。浅筋膜の構造は図6のとおりであり,深筋膜と異なり複数の層構造で形成されているため,単結節縫合で都度結紮することが望ましいと考える。開腹時に注意して観察すると薄い膜構造を見つけることが可能となるので,ぜひ開腹時に確認してもらいたい。創傷治癒過程の項目でも述べたように,皮膚および皮下の解剖と抗菌縫合糸との関係を理解し,構造を元どおりの状態に戻しつつ,減張を意識した縫合を取り入れることが重要である。また,帝王切開術の報告ではあるが,肥満女性における皮下ドレーン留置は創部感染を減らさないといった報告や,慣例的に行っている皮下洗浄も血腫や漿液腫は減らすが,創部感染を減らさないといった報告も散見する10)11)。 近年,閉創直後の上皮の微小壊死についても報告されている。Yamamotoらによると切開創の乾燥,開放状態は上皮欠損した上皮部位の微小壊死を引き起こし,創傷治癒遅延のみならず,上皮のズレを引き起こすことを報告している。また,術直後における創部のベストな管理方法は創部をしっかりと密着させ,湿潤環境を保持できるような閉塞性のドレッシング製剤で創部を保護することが望ましい12)。退院後は創傷治癒のタイムラインのとおり,深筋膜の治癒には半年程度要するため,その間は市販のサージカルテープやシリコン保護材などを用いて創部を十分に固定しておく必要がある。1192浅筋膜の模式図4閉  腹

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る