腫瘍 図3 卵巣チョコレート囊胞の超音波断層像 図4 卵巣チョコレート囊胞のMRIa:T1強調像,b:T2強調像26.子宮内膜症産婦人科の実際 Vol.73 No.11 20241275して認められ(図3),子宮に密着して子宮の後方,またはダグラス窩に位置することが多い。囊胞内の貯留血液は陳旧性のものが多く,不規則な凝血塊やヘモジデリン沈着を起こしているものがあり,注意深く観察する。卵巣チョコレート囊胞は肥厚した壁を有し,辺縁不整で周囲組織との境界が不明瞭,均一な内部エコー像(すりガラス状)が特徴である。卵巣皮様囊腫や壁在結節を有する卵巣癌との鑑別に留意する。経腟法が第一選択であるが,性交歴がない場合は経腹法を行うか,経直腸法で観察する。2●MRI MRIは,本症の診断に大きな役割を果たす。これはMRIは“信号に基づき血液を特異的に診断できる”ためである。卵巣チョコレート囊胞の診断には極めて有用であり,T1強調像では,皮下脂肪と同程度の高信号,T2強調像では高信号もしくは低信号となる“shading”を呈する(図4)。囊胞内の凝血塊と卵巣癌を示唆する壁在結節の鑑別には,造影MRIが役立つ。凝血塊は血流をもたないため造影されず,一方,壁在結節は強く造影される。妊娠中にみられる卵巣チョコレート囊胞の脱落膜化においても造影される充実部分が出現するが,この場合は拡散強調像が鑑別に役立つ。深部・膀胱・直腸子宮内膜症の診断においてもMRIは有用である。3●血清マーカー 診断に優れた血清マーカーはないが,CA125,CA19-9は軽度上昇することが多い。単独では診断精度が高くないが,ほかの所見と組み合わせることにより診断に有用である。進行例においては,CA125,CA19-9が陽性となることが多い。Ⅲ治療・処方の実際 薬物療法としては,対症療法とホルモン療法
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