Ⅳ生殖・内分泌榊原秀也H. Sakakibara 横浜市立大学附属市民総合医療センター婦人科(教授)1412疾患の概要 ターナー症候群(Turner syndrome;TS)はXモノソミー(45,X)を代表とする性分化疾患の1つで,45,XのほかX染色体の部分欠失や構造異常,種々のモザイクが含まれるため表現型は多様である1)。出生女児10万人に1人の割合で発生し,多くの合併症があるため多領域にわたる包括的ケアが必要とされる2)。低身長/翼状頸や外反肘などの外表奇形/性腺発育不全を3徴とし,内分泌・代謝異常や循環器疾患,自己免疫疾患などの合併も多い。また,合併症にはそれぞれ好発年齢があり,ライフステージに応じた管理が求められる(図1)。診療フローチャート1●検査のフロー 小児期にすでに診断されている症例が産婦人科的管理を目的に紹介される症例のスクリーニングを行う(図2)。原発性無月経を主訴に産婦人科で診断される症例もあるが,詳細は「原発性無月経」の項を参照していただき,本稿ではターナー女性(TS女性)と診断された後の管理について解説する。2●治療のフロー 卵巣機能不全に対するホルモン補充療法(hormone replacement therapy;HRT)について示す(図3)。問診・診察1●初診時 まず,診断契機と診断年齢,染色体の核型を確認する。多くの症例が低身長を契機に診断され,成長ホルモン治療を受けている。低身長の有無,成長ホルモン治療の有無を確認しておく。 次に,月経状況とHRTについて確認する。大多数が原発性無月経であり,小児科からの紹介時にすでにHRTが開始されていることが多い。一方,10~20%の症例では月経が認められるが,早発卵巣不全(premature ovarian insafi-ciency;POI)となることが多いのでフォローが必要である3)。 また,甲状腺機能・耐糖能異常・大動脈狭搾・性腺腫瘍などについて,既往歴,合併症としての管理が必要かを確認する。大動脈縮窄症や性腺腫瘍の手術歴を確認しておく。染色体の核型でY染色体のコンポーネントを有する場合には性腺の腫瘍化のリスクがある4)ので,手術歴がなければフォローアップが必要となる。2●フォローアップ時 a)月経状況 月経がある症例では周期や月経量などを確認し,POIの徴候を確認する。HRT中の場合は,月経痛や月経量,破綻出血などを聴取し,必要に応じてホルモン剤の量や種類を調整する。b)体調の変化 図1にあるように,年齢とともに種々の疾患の発生リスクが増すので,その徴候がないか確ターナー症候群47
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