2.急性胆囊炎に対する初期診療1731急性胆嚢炎は急性腹症の3〜10%を占めるとされ,日常診療で遭遇することの多い疾患の1つである。胆嚢炎は早期の治療が適切に行われなければ,敗血症から死に至る可能性もあるため,急性期に適切な治療がなされることが必要である。胆嚢炎に対する治療指針として今日では,急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドラインが出版されており,2018年には改訂版(TokyoGuidelines2018;TG18)が刊行された1)。TG18では,エビデンスに基づいた胆嚢炎に関するさまざまな指針が出されており,一般医療機関においては,ガイドラインに即した医療を行っていくことが望ましい。当院においてもTG18に則った診療を行っているが,以下,感染対策と周術期管理の観点から概説する。総特集消化器・一般外科手術における感染対策・周術期管理はじめにⅠ.術前管理……………………………………………………………………*KozoNOGUCHI,etal.市立豊中病院肝胆膵外科Keywords胆囊炎,感染対策,周術期管理 1.急性胆囊炎の診断急性胆嚢炎の診断は,右季肋部痛,腹部の圧痛および筋性防御,Murphy兆候,発熱,白血球数およびCRPの上昇に加えて急性胆嚢炎の特徴的な画像検査所見から総合的に判断して行う。表1に急性胆嚢炎の診断基準を示す。この診断基準を用いた場合の感度は91.2%,特異度は96.9%程度となっており,良好な結果が得られているが,全身性の炎症所見を認めない胆嚢炎については診断ができないなどの問題もある点に注意を要する。急性胆嚢炎と診断された症例に対しては,次に重症度を判定し,初期診療を開始する。呼吸や循環動態のチェックを行い,輸液や電解質の補正,抗菌薬,鎮痛薬の投与を行う。3.初期治療としての抗菌薬の投与タイミング急性胆嚢炎は,適切な時期に適正な治療が行われなければ,致死的な疾患であり,最近の研究結果によれば,30日死亡率は,TG13の重症度判定を行った場合,GradeⅠ,Ⅱ,Ⅲでそれぞれ2.4%,4.7%,8.4%とされている2)。敗血症性ショックの症例では,抗菌薬の投与を1時間以内野口 幸藏* 清水 潤三*Ⅱ.各論5)急性胆囊炎手術における感染対策・周術期管理
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