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 今回の臨時増刊号では「高難度肝胆膵外科手術アトラス2022」を企画しました。それぞれのエキスパートの先生方に総論7本,各論31本(肝臓14本,胆道5本,膵臓12本)の素晴らしい原稿をご執筆いただきました。 同様の企画を数年ごとに発行してきましたが,今回の各論では低侵襲手術に関する話題が充実しています。高難度手術の多い肝胆膵外科では手術の定型化が難しく,消化管外科と比較し,低侵襲手術の導入が遅れていました。一部施設で生じた手術関連死亡の報道を契機に,わが国独自の安全性に配慮した術前前向き登録制度が関連学会・研究会主導で設立されました。その結果,肝胆膵外科手術における内視鏡外科手術の安全性が示され,現在,多くの高難度肝胆膵外科手術が低侵襲手術により行われています。当初は試行錯誤であった手技も多くの経験により,開腹手術と同様に定型化されつつあります。過去のシリーズで取り上げられた定型手術に加え,腹腔鏡下肝・膵切除も開腹手術とほぼ並列となるようにしました。また,新たに保険収載されたロボット支援下膵切除も加えました。 高難度手術の多い肝胆膵外科手術ですが,総論ではその基礎となる外科解剖および最近の進歩が著しいシミュレーション・ナビゲーションをご解説いただきました。腹腔鏡手術が多く行われるようになり,より細かな外科解剖が必要となりました。日常診療で定着したシミュレーションソフトは,得られた詳細な外科解剖の情報を実際の手術においてどのように活かすか,において非常に重要です。また,その精緻な手術を手術記録に残すことは,外科医が何を考え,どのように手術を行ったかを残す唯一の手段であり,再切除の機会の多い肝胆膵外科における重要な情報となります。わが国の肝胆膵外科領域における手術記録は,文字だけでなく描画(イラストレーション)で伝えることが特徴であり,世界的にも評価されています。そこで,今回は手術記録の達人たちに,総論でその極意をご執筆いただきました。 定番の手術においても使用するデバイスや手術を取りまく周術期治療などの環境により,少しずつ変化があるものです。最新の「高難度肝胆膵外科手術アトラス2022」が皆様の手術の一助になることを期待しています。

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