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4基本手技④1次分枝内の肝動脈,門脈,胆管の分岐形態は症例によりさまざまで1次分枝でのGlisson■処理は絶対に行ってはならない。肝実質に入り込む2次分枝において区域と脈管が対応するので2次分枝以降でのGlisson■一括処理は安全に行うことができる。したがって,Glisson■一括処理による系統切除では尾状葉は温存される。右肝切除は前区域枝,後区域枝の処理,左肝切除は左葉枝*Takehito OTSUBO, et al.聖マリアンナ医科大学外科学(消化器・一般外科)Glisson鞘一括処理系統的肝切除455Glisson■一括処理は高崎らが考案し,1986年に報告した門脈系の脈管をそれぞれ個別に剝離することなく一括処理する術式である1,2)。本法は現在でも広く普及しており,肝臓外科医としてぜひとも身に付けておくべき手技である。本稿ではGlisson■一括処理の手技のコツと注意点について記載する。門脈,肝動脈,胆管からなる門脈系は肝実質内では,Glisson■という結合織に包まれている。肝外においても門脈,肝動脈,総肝管・総胆管は肝十二指腸間膜という結合組織に覆われており肝内外の門脈系を連続したGlisson樹と捉えることができる3)。肝十二指腸間膜はGlisson樹の本幹。これが肝門部で左右の1次分枝に分岐し,尾状葉の枝を分岐する。その後,右枝は肝実質に流入するところで2分岐し,2本の2次分枝となる。左枝は胎生期の静脈管であるArantius管を分岐したところより2次分枝となる。こうしてGlisson樹は3本の2次分枝となる。高崎はこの3本の2次分枝を左区域枝,中区域枝,右区域枝とし,それぞれ支配領域を左区域,中区域,右区域と命名した。本稿では外科用語辞典に従い,左区域をGlisson左葉枝,中区域枝を前区域枝,右区域枝を後区域枝と記載する(図1,2)。一方,肝静脈については,左肝静脈と中肝静脈は下大静脈に流流する間にほとんどが合流し共通管を形成することから左肝静脈を中肝静脈の枝と捉え,3つの区域の境界,すなわち左区域と中区域の境界を流れる左肝静脈(左肝静脈と中肝静脈を合わせたもの)と中区域と左区域の境界を流れる右肝静脈として記載した(図2)。大坪 毅人* 小泉  哲* 小林慎二郎*はじめにGlisson鞘一括処理 1 Glisson樹の分岐形態 (高崎の3区域分け)

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