6腹腔動脈幹切離を伴う膵体尾部切除(DP-CAR)佐藤 崇文* *Takafumi SATO, et al. がん研有明病院肝胆膵外科膵体部癌DP-CAR左胃動脈再建645Applebyにより報告された局所進行胃癌に対する胃全摘+膵体尾部切除+腹腔動脈切除(いわゆるAppleby手術)を1),わが国の二村らが膵体部癌に応用し2),さらにAppleby手術から胃全摘を除いたDP-CAR(distal pancreatectomy with celiac axis resection)が考案された3)。本稿では,主に膵体部進行膵癌に対する切除術式であるDP-CARの,当院での手術手技を解説する。膵臓は解剖学的に腹腔動脈(celiac artery;CA)・上腸間膜動脈(superior mesenteric artery;SMA)・門脈(portal vein;PV)といった主要な血管と接して存在しており,それぞれの血管から複雑な血行支配を受けているうえ,破格も多い。膵体部に癌が発生した場合にはこれらの血管が容易に浸潤を受けるため,膵癌外科治療において最も重要なR0切除を企図した場合,これら主要血管の合併切除を要する場合がある。手術は術前にどこまで深く計画を練るかが一歩目である。前述のとおり血管の破格が多いため,術前の造影CTで動脈の走行を十分に確認すると同時に,門脈系の走行も把握する。破格とは言えないまでも,CAが大動脈の何時方向から分岐しているかも,本術式においては重要である。また,術前に化学療法を受けている症例では,化学療法施行前の画像とも比較して切除範囲を決定する必要がある。電子カルテ画像上の確認だけでは不十分であり,常に術前にシェーマを作成するようにしている(図1)。われわれはDP-CARにおいては術前の塞栓術を行う代わりに左胃動脈血流の温存を標準としており,これをmodified DP-CARと呼んでいる4-7)。したがって,左胃動脈(left gastric artery;LGA)の分岐形態と走行を正確に把握する必要がある(図2)。LGAが大動脈から分岐している例や,腫瘍からLGA根部まで十分に距離がある例で血管の温存が可能であると思われる症例でも,LGAの途中で腫瘍の浸潤を受ける場合があるため,常に動脈再建の準備は必要である。当科では動脈再建を形成外科に依頼しているため,顕微鏡や形成外科医の確保を含め,井上 陽介* 髙橋 祐*はじめに 1 準 備
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