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C 下縦隔右側と左側の郭清図2. 下縦隔腹側の郭清るが,No.111の徹底郭清は不要であるため下大静脈にはあまり寄りすぎないよう注意する。ある程度頭側にまで下縦隔腹側の郭清が終わったら,下縦隔背側の郭清に移る。食道を腹側に牽引して,左右の横隔膜脚の間の横隔膜食道筋膜に切開を加えると,背側に大動脈前面が現れる(図3)。大動脈前面には疎な層があり,容易に剝離可能であるが,頭側に進むほど大動脈から直接分岐する食道固有動脈が見られるため,出血させる前にクリップもしくは超音波凝固切開装置などで確実に止血しておいたほうがよい。また,大動脈右側には胸管や奇静脈,No.112aoAを含む脂肪組織があるが,この領域の予防的郭清は不要と考える。下縦隔背側の郭清がある程度頭側まで終了したら,そのまま右側に回る。食道と右胸膜の間に存在する脂肪組織を丁寧に剝離すると,右の壁側胸膜のラインが透見されるので,このラインを右側の郭清境界として頭側に向かって剝離を進める(図4)。この際,食道を強く左方に牽引しすぎると右胸膜が食道側に引き寄せられるため,剝離の際に右胸膜に孔が開いてしまうことが多い。孔が図3. 下縦隔背側の郭清図4. 下縦隔右側の郭清開いた場合は,できるだけそのつど縫合閉鎖しておくようにする。先に剝離しておいた腹側と背側のレベルまで下縦隔右側の郭清を行うが,この際も右の壁側腹膜と心囊との間を走行する下大静脈に近づきすぎないよう注意する。最後は,下縦隔左側の郭清であるが,われわれは下縦隔内吻合での視野確保の目的も兼ねて,左の壁側胸膜は合併切除している。したがって,大動脈左側のNo.112aoAは郭清しながら頭側に剝離を進め,No.112pulLも一緒に郭清するように左肺間膜を切離していくが,この際左肺との境界を見誤らないよう注意する(図5)。頭側の境界765

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