とが多いのでそれに倣う。鼠径ヘルニア修復術は精索の解剖の理解なしには遂行できない。精索は鼠径部切開法では外腹斜筋腱膜を切開すると鼠径管内に横たわった状態で,TAPP法では内鼠径輪部でその断面図に近い構造としてイメージできる(図2)。精索の構造は腹膜■状突起(開存していればこれがL型のヘルニア囊,閉じていれば細い索状構造であるが,鼠径部膨隆の原因とならない程度に小さく開存している場合もある),精巣血管,輸精管,およびこれらの全体を包む膜構造に簡略化して考えることができる。全体を包む膜構造としてはoutから内精筋膜,浅部のあの膜,あの膜を認識すべきであるが後2者については後述する。加えてLichten-stein法においては鼠径管のinで精索に近接する構造として腸骨鼠径神経,腸骨下腹神経,陰部大■神経陰部枝と外精血管を含む索状物にも注意が必要であり9),L型を例に概念的な鼠径部断面図を示す(図3)。M型の場合には開存する腹膜■状突起が閉鎖した索状物に置き換わり,内鼠径輪から恥骨結合部までの横筋筋膜にヘルニア門が存在することになる。説する(図4〜8)。上前腸骨棘から恥骨結節中央を結ぶ線の中点を通り,皮膚割線に沿う約6 cmの皮膚切開を行う(図4)。手術操作のmedialは恥骨結節部で正中近くになることを想定し,必要に応じて切開位置を変える。この切開創はLichtenstein法でメッシュを留置する範囲の長軸より明らかに短く,実際の手術操作では助手が筋鉤などで創縁を動かすことによって術野をlateral,medial,頭側,尾側に広く得る必要がある。破線で手術操作が及ぶ範図1. In・outとmedial・lateralの違い A 皮膚切開から 外腹斜筋腱膜前面の剥離まで676676Lichtenstein法に必要な鼠径部解剖1 4 解剖をふまえた手術操作以下,右L型の男性症例を例に手術操作を解 3 精索の見方
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