側方リンパ節が存在する側方腔を理解するためには,側方腔を臓側と壁側とに分ける衝立的構造物である膀胱下腹筋膜と呼ばれる内腸骨血管およびその臓側枝を含む厚みをもった膜組織と,尿管・下腹神経・骨盤内臓神経および骨盤神経叢が含まれる尿管下腹神経筋膜の認識が重要である(図2)。佐藤達夫は,後腹膜臓器およびそれらに分布する血管・神経を含んだ腎筋膜が骨盤で3層に分化するとした3)。男性であれば前層は精巣動静脈と精管を包含した精管・精巣動静脈筋膜,中層は尿管を包んで膀胱へ達する尿管下腹神経筋膜,後層は大動脈・下大静脈から総腸骨動静脈・内腸骨動静脈へと続く膀胱下腹筋膜である。上記の膜構造を境界として,側方リンパ節であるNo.263とNo.283が存在する。No.263と A No.263リンパ節・頭側縁:内腸骨動脈分岐部・尾側縁:Alcock管・内側縁:尿管下腹神経筋膜(図4)・外側縁:膀胱下腹筋膜(図5)・腹側縁:膀胱周囲脂肪・背側縁:内腸骨動静脈 B No.283リンパ節・頭側縁:外腸骨動脈分岐部・尾側縁:Alcock管・内側縁:膀胱下腹筋膜(図6)・外側縁:腸腰筋,内閉鎖筋(図7),肛門挙筋No.283の郭清範囲の解剖学的ランドマークを下記に示す(図3)。腱弓腸腰筋閉鎖神経腸骨腸骨内閉鎖筋梨状筋内外腸骨動静脈腰仙骨神経幹外腸骨動静脈No.283骨盤神経叢骨盤内臓神経膀胱下腹筋膜No.263尿管下腹神経筋膜尿管精囊直腸直腸下腹神経仙骨仙骨Denonvilliers筋膜直腸固有筋膜下腹神経筋膜図2. 側方腔の膜構造604604側方リンパ節郭清に必要な骨盤解剖7 1 側方腔の膜構造について
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