る.疑い例が発生した場合,詳細な検査のため専門施設[aHUSの全国調査研究事務局(名古屋大学腎臓内科),かずさDNA研究所など]への相談を要する6).臨床的にaHUSと診断されたら,速やかに抗補体C5モノクローナル抗体製剤による治療開始を検討する.赤血球輸血は重度貧血時に推奨されるが,血小板輸血は微小血栓形成を促進させる懸念があるため,原則として推奨されない. 患者:8歳,女児 現病歴:慢性免疫性血小板減少症(immune thrombocytopenia:ITP)の診断でPlt 5~7万/μLで数年間推移していたが,その後減少傾向となり,3か月前から1万/μLとなり,免疫グロブリン大量療法が無効であったため精査目的に高次医療機関に紹介された. 理学所見:下腿に斑状出血斑多数.軟口蓋に点状出血斑数個. 紹介時の初回検査所見:WBC 13,000/μL(血球像に異常なし),RBC 473万/μL,Hb 12.3 g/dL,Ht 38.4%,MCV 81.2,MCH 26.0,MCHC 32.0,Plt 1.5万/μL,網赤血球20‰,PA-IgG 146,HbF 45.0%. 追加の検査所見:TSH 2.58μIU/mL,FT4 1.54 ng/dL,FT3 3.6 pg/dL,骨髄生検:hyper-cellular marrow,顆粒球系の増生が著明で,赤芽球も散在.巨核球はきわめて少なく小型.線謝辞 aHUSに関する助言を得た奈良県立医科大学小児科教室の石川智朗医師に深謝します.維化,異型細胞,芽球増生なし. HbFは,胎生期ヘモグロビンの大半を占め,出生後HbAの合成が増加するのに伴ってHbFの合成は減少し,生後6か月~1年後には全体の約1%以下になる.乳児期以降のHbF高値の鑑別は,サラセミア症候群,β鎖異常の不安定ヘモグロビン症,遺伝性高HbF血症などの先天性疾患,悪性貧血,再生不良性貧血,白血病,骨髄異形成症候群,発作性夜間血色素尿症,骨髄線維症,多血症,甲状腺機能亢進症など多岐に渡る. 初診時の採血結果から先天性血小板減少症,骨髄異形成症候群,骨髄線維症,難治性ITPが鑑別に挙がり,骨髄生検でITPは否定的となったが確定診断には至らなかった.その後の経過で正球性~大球性貧血と好中球増多症が進行し,白赤芽球症(赤芽球と幼弱好中球が末梢血に出現)を呈し,最終的にRUNX1遺伝子変異による悪性腫瘍傾向を伴った家族性血小板異常症(RUNX1 familial platelet disorder with associated myeloid malignancies:RUNX1-FPD/MM)と診断された.骨髄像は最終的に骨髄異形成症候群として矛盾のない所見と判断された.HbFは前医でも高値を指摘されていたが,仮に早い時期に精査されていても確定診断を得ることは難しかったと推察され,定期的なフォローで臨床症状や検査値の変化を見逃さないことが重要である8).ヘモグロビンF高値の鑑別―RUNX1-FPD/MM(RUNX1遺伝子変異による悪性腫瘍傾向を伴った家族性血小板異常症)の場合14184章 ❷赤血球検査症例鑑別診断の考え方解説
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