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* 奈良県立医科大学小児科2赤血球検査荻おぎ原わら 建けん一いち* 野の上がみ 恵けい嗣じ* 患者:5歳,女児 現病歴:感冒症状を繰り返しており,発熱時に採血したところ,小球性貧血を認めた. 理学所見:眼瞼結膜貧血軽度あり,眼球結膜黄染なし. 初診時検査所見:WBC 7,000/μL,RBC 410万/μL,Hb 8.9 g/dL,Ht 30.4%,MCV 74.1,MCH 21.7,MCHC 29.2,Plt 18.0万/μL,CRP 1.0 mg/dL 追加の検査所見:網赤血球1‰,血清鉄15μg/dL,フェリチン255 ng/mL,TIBC 370μg/dL. 小児科クリニックでは,血算とCRPのみが自施設で測定できる場合があり,発熱時の採血で偶発的に貧血を認めることは少なくない.小球性低色素性貧血で頻度が高いのは鉄欠乏性貧血であるが,血清鉄低値というだけで診断してはいけない.鉄欠乏の有無はフェリチンで評価する必要がある.本例で鍵となる所見は,血清鉄低値とフェリチン高値である.感染性貧血は正球性正色素性貧血であることが多いが,経過が長いと小球性低色素性貧血となる.血清鉄は低下するが,総鉄結合能の上昇がなく,血清フェリチンが高値を示す.乳幼児では重症感染症や小感染反復も原因となる1). 慢性疾患において原因が特定できない貧血がみられる場合は多い.近年,このような貧血の病態の1つとして,IL-6などの炎症性サイトカインの過剰により,血清ヘプシジンが増加し,鉄の利用障害が起きることが判明した.ヘプシジンは網内系細胞に貯蔵された鉄放出を抑制し,血清鉄値を低下させ,網内系の貯蔵鉄(フェリチン)を増加させる.感染性貧血では,鉄の利用障害以外にも,赤血球寿命の短縮,腎臓のエリスロポエチン産生能低下,骨髄の赤芽球造血能の低下などの病態が関与する2)3).感染性貧血に対しては,基礎疾患への対応が優先され,鉄剤処方は不要である. 患者:13歳,男児 現病歴:無症状.偶発的にMCV低値を指摘された.小球性低色素性貧血の鑑別 ①―感染性貧血の場合小球性低色素性貧血の鑑別 ②―サラセミアの場合1415 4章 血液一般検査KEY WORDS小球性低色素性貧血,微小血管障害性溶血性貧血,ヘモグロビンF症例鑑別診断の考え方解説症例

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