4 *STEC:志賀毒素産生性大腸菌血液一般検査これらの結果から非典型溶血性尿毒症症候群(atypical hemolytic uremic syndrome:aHUS)を疑い治療を開始した.後に遺伝子解析でfac-tor H遺伝子変異が同定された. MAHAは,微小血管内で微小血栓が形成され血管内溶血を呈し,破砕赤血球を伴う貧血,ハプトグロビン低下,LDH上昇などを特徴とする疾患群であり,血小板血栓形成が主体の血栓形成性微小血管障害(thrombotic microangi-opathy:TMA)と,フィブリン血栓形成が主体の播種性血管内凝固(disseminated intravas-cular coagulation:DIC)に大別される.TMAは,クームス試験陰性の溶血性貧血,消耗性血小板減少,微小循環障害による臓器障害(腎,肝,消化管など)を三主徴とし,血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP),溶血性尿毒症症候群(hemo-lytic uremic syndorome:HUS)等を含む.TMAのうち,ADAMTS13活性低下があればTTPであり,活性低下がなければ,志賀毒素産生性大腸菌感染による典型HUS[Shiga toxin-producing Escherichia coli(STEC)‒HUS],補体系の異常活性化によるaHUS,自己免疫疾患・移植・悪性疾患などに合併する二次性TMAに分類される6)7)(図).よって,aHUSはSTEC-HUSとTTPにあてはまらないTMAから二次性TMAを除外して診断する.通常の便培養や便中O157抗原検査などでSTECの同定が困難なSTEC-HUSも存在するため,血清や便を保存し,地方公衆衛生研究所や国立感染症研究所への依頼も検討する.補体活性化経路の1つである第二経路の異常活性化がaHUSの本態であり,補体系抑制因子の機能喪失(抗H因子抗体,H因子関連遺伝子異常)によるものと,活性化因子の機能獲得によるものとに大別される.一般臨床においてはC3低値かつC4正常で第二経路活性化が示唆されるがC3正常例もあ1417血小板血栓形成が主体血栓形成性微小血管障害 (TMA) ①クームス試験陰性の溶血性貧血 ②消耗性血小板減少 ③臓器障害(腎,肝,消化管など)ADAMTS13活性<10%血栓性血小板減少性紫斑病抗ADAMTS13抗体抗ADAMTS13抗体(-)(-)(+)(+)先天性TTPフィブリン血栓形成が主体原因不明原因不明基礎疾患あり基礎疾患あり補体制御因子補体制御因子関連の異常関連の異常STEC*による典型HUS(STEC-HUS)小児科 Vol.64 No.13 2023播種性血管内凝固(DIC)その他のTMA自己免疫疾患・移植・悪性疾患などに合併(二次性TMA)補体系の異常活性化による非典型HUS(aHUS)(文献6より改変)図 微小血管障害性溶血性貧血の診断フローチャート微小血管障害性溶血性貧血(MAHA)STEC*陽性(TTP)後天性TTP解説
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