* Yuko NAKASHIMA,広島大学大学院医系科学研究科,運動器超音波医学Ultrasonography of peripheral nervesK中島 祐子* 現時点では,高周波リニアプローブと高解像度の超音波診断装置を用いれば,末梢神経の神経束レベルでの観察や皮下組織内の皮神経の観察も可能である。神経断面の超音波画像はfascicular patternと呼ばれ,黒いツブツブとした蜂の巣状として描出できる。絞扼性神経障害では神経の圧迫と偽神経腫,占拠性病変の確認を行う。腫瘍ではその形態や内部の血流信号の有無は重要な情報となる。神経損傷では連続性が途絶える部位を診断すること,そして部分損傷では神経のどの部位が損傷しているかも判断できる。近年話題の末梢神経の砂時計様くびれは,神経痛性筋萎縮症の亜型と考えられ,前骨間神経麻痺・後骨間神経麻痺の肘周囲の一部の神経束に異常を認めることが多い。末梢神経疾患の画像診断として,超音波検査は非常に有用性が高く,病態がわかれば適切な治療選択に結びつくため,診療に欠かせないモダリティである。 近年の超音波診断装置の進歩は目覚ましく,高周波リニアプローブの登場やデジタル画像の進化によって末梢神経の鮮明な描出が可能となった。20年ほど前に主流であった装置の画像と比べると飛躍的にきれいになったのがわかる(図1)。画像がきれいになると,人を納得させることができるようになるため,末梢神経を含め,運動器に関する研究論文の数は右肩上がりである1)。 超音波検査はその分解能の高さと,自由自在な角度での連続スキャンが可能であることから,小さな異常も見逃しにくい。本稿では超音波検査が診断に有用であった症例を挙げながら,上肢の末梢神経疾患の超音波診断について解説する。疾患の症状や身体所見に関しては正書や本特集のそれぞれの疾患の項目を参照していただきたい。 現在の超音波装置は運動器に適した設定が既にされており,整形外科で使用する場合には常に高周波リニアプローブを選ぶだけ(プローブが1本しかない場合は電源を入れるだけ)で検査が可能な状態になる。最近運動器の観察に汎用されている高周波プローブは,メーカーによって表記が異なることはあるが,帯域が18⊖4 MHzというような表記をされるものが多い。高周波のプローブは,分解能は高いが透過性が低いという特徴がある(表1)。つまり,浅い部位が鮮明に描出できるという特徴である。周波数は高い方が細かく観察できるが,前述のように透過性が悪くなるため,近年登場している30 MHz以上の超高周波プローブでは日常診療で扱う末梢神経疾患を幅広く観察整・災外65:509 519,2022509 Ultrasonography, Entrapment neuropathy, Nerve injuryordseyW利益相反 あり(コニカミノルタ株式会社・株式会社ソシオネクストとの共同研究講座に所属)要旨ⅣⅡは じ め に Ⅰ. 末梢神経疾患に対する 超音波検査の基本末梢神経疾患の診断画像診断 ―エコー―6
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