055272022045T
5/10

* Toshihiro KANDA,聖隷浜松病院,上肢外傷外科End to end neurorrhaphyK神田 俊浩* 神経縫合の治療成績は,損傷高位や損傷程度,患者の年齢や基礎疾患,修復までの期間などが影響するが,もちろん縫合技術も影響する。縫合法には神経上膜のみを縫合する神経上膜縫合,神経線維束を分けて適合する神経線維束同士を縫合する神経線維束縫合,神経上膜と周膜とに同時に糸をかけ縫合する神経上膜周膜縫合がある。筆者は受傷後可及的早期に神経上膜縫合による神経修復を行っている。神経縫合ではmisdirectionの回避が重要であるため,縫合の際は断端におけるfunicular patternを観察し,同一の神経線維束が相対するように合わせて縫合する必要がある。欠損などにより縫合部の緊張が強い場合は端端縫合を断念し神経移植を考慮する。縫合部から神経線維束がはみ出したり,bucklingやgapを生じたりしないよう注意が必要である。神経縫合後は縫合部に緊張がかからない肢位での外固定を3週間程度行い,徐々に可動域改善をはかる。 われわれ整形外科医は,断裂した組織を修復するにあたり,しばしば「縫合」という手技を行う。しかしながら,この「縫合」という手技は扱う組織により大きく異なる。腱縫合であれば,早期訓練に耐えうる強度をねらった縫合手技が必要となり,血管吻合における縫合であれば,術後血栓や血液漏出を生じないための縫合手技が必要となる。末梢神経縫合において重要となるのは「misdi-rectionの回避」である。末梢神経の構造はミクロ単位で複雑であり,この構造を理解した上で,できる限りmisdirectionを生じない神経縫合を心がける必要がある。整・災外65:541   548,2022541 Misdirection, Epineural suture, Funicular sutureordseyW利益相反 なし要旨 Ⅰ. 神経縫合に影響する因子1) 1 損傷神経と高位 より高位であるほどmisdirectionを生じやすい。また,高位であるほど損傷部位から支配筋までの距離が長くなるため,運動回復が困難である。橈骨神経深枝の損傷(図1)や,正中神経の運動枝(母指球筋枝)の損傷(図2)であれば,純運動神経のレベルであるためmisdirectionの影響も少なく,また損傷部位から支配筋までの距離も短いので,良好な回復が期待できる。指神経のような純感覚神経も同様であり,misdirectionの影響がほとんどないため,神経断端が適切に縫合されれば良好に回復する(図3)。神経縫合の際,緊張が強く縫合困難な場合は神経移植を考慮するが,指神経のような感覚神経の場合は人工神経移植も選択肢の一つとなる。ⅣⅢは じ め に手術方法神経端端縫合9

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る