図3コンソール内での操作の様子と手術用アームによるOberlin法ストラスブール大学にいる患者を,東京から手術をすることも可能となる。A コンソール内での操作の様子B 手術用アームでOberlin法を行っている様子 整形・災害外科 710"hinotoriTM"が薬事承認されたというニュースは,周知の事実である。しかしながら,筆者が"hino-toriTM"の担当部署へ連絡し,マイクロサージャリー分野への適応拡大の可能性に関して確認したが,「現状では顕微鏡手術への展開は考えていない」との回答であった。 また,ロボティックマイクロサージャリーの利点の一つである遠隔ロボット支援手術の実現に向けて現在進行中のプロジェクトを紹介する。手術支援ロボットの開発を目的に設立されたリバーフィールド社では,通信データの会社や情報処理専門の企業などと共同で,通信速度を最大限まで上昇させることで,既に遠隔手術における2点間での時差を150 km離れた地点でも100 msレベルまで短縮することに成功しており,ほぼタイムラグなく手術を遂行可能としている。これらの技術を利用すれば,海外のロボティックマイクロサージャリーのスペシャリストから,日本にいながらタイムラグなくレクチャーを受けることも可能である(図3)。また,コロナ禍で地方から都心部へ研修に来ることが難しい施設でも,ロボット手術のトレーニングコースへの参加が所属施設から可れらの現状の問題点が解決されていないことから,本邦ではマイクロサージャリーに特化した手術用ロボットの開発が進んでいないと考えている。 Ⅲ. 末梢神経外科領域でのロボティックマイクロサージャリー実現に向けての展望 ここまで述べてきた現状の問題点だけから判断すると,本邦での末梢神経外科領域でのロボティックマイクロサージャリーの実現可能性は非常に低いような印象であるが,そこまで悲観的な状況ばかりではなく,明るいニュースもいくつかある。 まずは,これまで20年にわたり一社独占で行われてきたロボティックマイクロサージャリーのマーケットが,2020年でIntuitive社のda Vinciの特許期限が切れたため,多くの企業へ門戸が開かれることになった。既に,国内企業が多く手術用ロボット開発に着手している。本邦でもいくつかの企業や大学が手術支援ロボットの開発に着手しており15),メディカロイド社(川崎重工業社・シスメックス社)の国産初の手術支援ロボット
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