* Satoru IDE et al,産業医科大学,放射線科学講座Emerging diagnostic imaging techniques in spine and spinal cord脊椎脊髄の画像診断の進歩と最新の知識Ⅰ1Ⅰ Key words MR neurography, MR bone imaging, Photoncounting CT 脊椎・脊髄領域の画像検査では組織コントラストに優れるMRIが有用である。脳神経領域に比べ,脊椎・脊髄領域のMR撮像の手法は多彩とはいえないが,近年の高速・高分解能撮像法の登場により,それぞれの病態に対応できる撮像オプションも得られるようになってきた。MRIであれば,拡散テンソル画像(diffusion tensor image;DTI)による脊髄や神経根の評価,MR neurogra-phyによる神経根の評価,骨皮質イメージングによるCTlikeイメージング,全身拡散強調画像(whole body diffusion)による骨転移や骨髄腫の評価などが挙げられる。一方でCTについても技術革新がみられる。近年は立位CTによる荷重下での運動器画像評価,dual energy CTによる金属アーチファクトの軽減や骨髄病変の評価の有用性が報告されている。さらにフォトンカウンティングCT(photoncounting CT;PCCT)の登場により,低被曝でかつ高い空間分解能とコントラスト分解能が得られ,従来のMRIやCTでは評価が難しかった病態について,新たな知見や臨床的に有用な情報を提供しうる。本稿ではこれらの脊椎・脊髄領域の画像診断におけるトピックスについて概説する。ⅠD T I MRIを用いて水分子の拡散を強調し,画像化したものが拡散強調画像(diffusion weighted image;DWI)であり,拡散運動が制限される領域が高信号として描出される。水分子に含まれるプロトンに対して一定方向から運動検出傾斜磁場(motion probing gradient)を印加することで信号を取得する。拡散の大きさの指標としてADC(apparent diffusion coefficient)が用いられる。急性期脳梗塞の診断においてはDWIが必須であり,臨床現場で広く用いられている。また,DWIは水分子の拡散のしやすさだけでなく,拡散の方向性にも強い影響を与える。神経線維では軸索細胞膜整・災外66:451 457,2023― 451 ―井手 智* 青木 隆敏*はじめに要 旨 脊椎・脊髄領域の画像診断では組織コントラストに優れるMRIが病変の評価に有用である。拡散テンソル画像(DTI),MR neurography,全身拡散強調画像などの新たな画像技術によって,従来のMRIでは評価が難しかった病変や病態の評価が可能になった。さらにMRIによる骨皮質イメージングによってCT同様の骨病変評価ができる可能性を秘めている。CTでは立位撮像による荷重評価や,dual energy CTによる骨病変の評価で新たな知見が得られている。さらにフォトンカウンティングCT(PCCT)は,従来のCTやMRIでは得られなかったデータ収集による高精度診断が期待されており,臨床研究の報告が増加しつつある。これらの新技術が,様々な脊椎・脊髄疾患の病態解明や適切な診断・治療方針決定に役立つことが期待される。脊椎脊髄の画像診断の進歩と最新の知識脊椎・脊髄画像診断のトピックス
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