脊椎脊髄の画像診断の進歩と最新の知識ⅠABA 70代男性(馬尾神経鞘腫)。馬尾に沿って存在する結節が明瞭に描出される(矢図4 MR hydrography(FIESTA)ビームCTを用いることにより,立位・荷重状態において画像評価することで,運動器疾患の適切な病態評価が可能となる。健常者における立位CTで脊椎アライメントと股関節接触領域の関係を検討した報告では,矢状断における重心の位置と股関節接触領域は有意に関連し,重心の前方化が変形性股関節症発症と関連することが示唆されている12)。プロトコールの統一や臨床研究によるエビデンス構築が今後の課題である。ⅧDual energy CT(DECT) DECTでは,2種類の異なるエネルギーのX線で撮像することで,2種類のデータを得られる。これにより任意の仮想単エネルギー画像や物質弁別画像を作成することができる。多くの装置で通常のCTと比較して撮像時間と被曝量にほとんど差はない。 骨軟部領域においては,仮想単エネルギー画像が金属アーチファクトの抑制に使用できる。整形外科領域の術後の画像には金属が含まれていることが多く,CTでは金属アーチファクトによる画質劣化が問題となる。このアーチファクトが発生する主な理由はbeam hardeningであり,金属が低いエネルギーのX線を吸収することで生じる。実際のX線管球から出るX線は低いエネルギーから高いエネルギーまでを含めた多エネルギーX線である。一般的には120 kVのX線では,40 kVなどの低いエネルギーから最も高いエネルギーとして120 kVのX線を含む。DECTにおける仮想単エネルギー画像は,通常作成できない任意の単エネルギーX線による画像を仮想的に作成したものである。そこで,beam hardeningの発生しない高いエネルギー(およそ100 keV以上)による画像を作成することで,金属アーチファクトのない画像を得ることができる。なお,高いエネルギーの画像を読影する場合,画像コントラストの低下が重要なpitfallとなる。一般的に組織間のコントラストは低いエネルギーのX線で強調されるため,アーチファクトの少ない高いエネルギーの仮想単エネルギー画像ではコントラストが低下する。そのため液体貯留の指摘や造影効果の評価はしづらくなっていることに注意を要する。Vol.66No.52023― 455 ―印)。B 40代男性(左外側型椎間板ヘルニア)。L5/Sレベルで左外側型椎間板ヘルニアを認める(矢頭)。突出した椎間板と骨棘による神経根の圧迫が明瞭に描出されている(矢印)。
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