055272023045
5/10

成人の脊椎脊髄疾患の画像診断ⅡⅡ Key words Myelopathy, Non­traumatic spinal cord injury, Magnetic resonance imaging 利益相反 なし 倫理的側面 本稿で提示した症例の臨床病理学的検討に関しては,愛知医科大学医学部倫理委員会の承認を得ている。*1)  Takashi ANDO,日本赤十字社愛知医療センター*2)  Masahisa KATSUNO,名古屋大学大学院医学系*3)  Mari YOSHIDA et al,愛知医科大学,加齢医科学 脊髄障害は外科疾患に起因するもの以外に,様々な内科疾患を背景として生じうる。非外傷性脊髄障害の原因としては圧迫性や脊髄腫瘍の割合が大きいものの,内科疾患に分類されるものが2割前後を占めていたとする報告が多い1)~3)。実臨床においては臨床情報から外科・内科を問わず適切な鑑別疾患を想起した上で,診療方針を決定していく必要がある。本稿では脊髄障害をきたす内科疾患の臨床的特徴や画像所見を解説し,病態の理解が深まるよう画像の背景にある病理像を併せて提示する。Ⅰ画像診断の前に 神経診断学においては,病歴聴取と神経診察から得た臨床情報に基づき神経系のどこに病変が存在するのかをまず考え(局在診断),症状の発症様式や諸検査からその病態を推測し(質的診断),これらを組み合わせて鑑別診断を想起する3段階診断法が有用とされている。脊髄障害においても,発症様式による質的診断が原因疾患を推測する上で重要である。例えば,数分~1日以内に症状が完成する突発発症様式では脊髄梗塞や出血,数日~週単位で症状がピークに達する急性/亜急性の発症様式では脱髄疾患,自己免疫疾患,感染症などの病態が疑われる。週~月単位で進行性の経過を呈する場合には神経サルコイドーシスや腫瘍,再発と寛解を繰り返す場合には多発性硬化症整・災外66:591   597,2023―  591  ―安藤 孝志*1)  勝野 雅央*2) 吉田 眞理*3) 岩崎  靖*3)は じ め に要 旨 様々な内科疾患が脊髄障害の原因となるが,治療により症状の改善や再発の予防が可能な疾患が含まれており,診断を的確に行う必要がある。まず,画像診断を行う前に,発症様式を聴取することが原因疾患の病態を推測する上での参考になる。この発症様式の情報と,矢状断MRIにおいて脊髄病変の長さが3椎体以上かそれ未満かの所見を組み合わせることにより,鑑別疾患をある程度絞り込むことができる。髄内病変は頚髄~馬尾のどこに存在するか,灰白質優位・白質優位・横断性のどのパターンか,白質病変がある場合には部位は前索・側索・後索のどこか,左右対称か非対称か,造影効果の有無などの特徴を確認する。内科的治療が可能な脊髄障害の原因として,多発性硬化症,視神経脊髄炎スペクトラム障害,MOG抗体関連疾患,神経サルコイドーシス,血管内大細胞型B細胞リンパ腫などが挙げられる。適切な診療のために,脊髄障害を担当する外科医と内科医の連携が重要である。名古屋第一病院,脳神経内科研究科,神経内科学研究所Radiological findings of neurological disorders in the spinal cord成人の脊椎脊髄疾患の画像診断内科疾患による脊髄障害の画像診断19

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る